表現の糧に

 
 
「日本一賢いLGになる」
 
ポジションが決まり、一回り長いクロスを手にした一年生の時、人知れずそんな目標を立てた。
四年生になった暁には、俺が東大DFを牛耳るんだと息巻いていた。
大舞台で観衆を魅了する味方のOFを、DFコートから眺めるのが夢だった。
 
でも、うまくいっていたのははじめの一年だけ。
腰痛が悪化した二年生からはまともにプレーできず、情けない毎日が始まった。
何度も気持ちが切れて、何度もやめようと思った。
 
完全に気持ちが切れていた二年生の終わり頃。ほんの些細な思い出だけど、忘れられないことがある。
 
それは駒場の壁に行った時のこと。みんな本郷での授業も増えてきて、33期で賑わっていた以前の光景ではなかったけれど、ひとつだけ変わらないものがあった。独り言とは思えないデカい声でぶつぶつ言いながら壁打ちする中田の姿だ。
 
昔と変わらないその姿は自分を見つめ直すにはいいきっかけだった。
初心を思い出そう。目標を思い出そう。背番号をくれた藤野さんに恥ずかしくない選手になろう。
 
そのあとも何度も腰痛は悪化して、その度に考え込んだけれど、続けてこれたのはいつしか心の拠り所になっていた目標のおかげ。そしてそれを思い返させてくれた中田をはじめとする、同期や先輩のおかげ。
 
結局、自分で立てたその目標からは遥か遠ざかってしまった。日本一はおろか、東大一賢いLGからも程遠い。Bの中ですら自分が1番上手いとは到底言えない現状だ。
 
このブログの話を聞いた時、正直嫌だと思った。Bリーグ初戦の慶應戦に負けたあと、よりその気持ちは強まった。おそらく最後の試合になるであろう11/1の立教戦を終えて、プレーで表現する舞台がもうないであろう自分が何を書けばいいのか。
 
その答えはわからない。
でも、今まで自分が受け取ってきたものを同期や後輩に与えることなら、少しくらいはできるはず。
 
終わりが見えてるんだから、最後くらい、今まで無駄にしてきた分も全力でプレーしよう。用もないのに同期に話しかけよう。後輩に偉そうにDFを語ろう。
 
そんな自分から何か受け取ってくれればいい。
自分のプレーが、言葉が、そして共に闘った時間が、ほんの少しだけでもみんなの表現の糧になってくれればいい。
 
あとは託す。
 
 
4年LG #34 岡田太樹

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