応援する側から託される側へ

シーズン初めのころから、相談役ってわけではないけど、うどさん(*1)や渉さん(*2)からよく話は聞いていました。それで、3月の半ばにうどさんがHCをすることに決まって、その時にうどさんから、協力してほしい、と言われてコーチになりました。もともと引退したときからコーチをやりたいという思いはあったんです。自分が現役のときにコーチやOBの方々に育ててもらったという意識が強くあったので、僕にできる形でチームに恩返ししたかった。特別才能があるわけでもない中で、4年間を通して考えてうまくなった自信はあったし、それを還元できればチームの役に立てるのではないかと。でも社会人になってからの2年間は、仕事が忙しい中で中途半端に関わっても迷惑をかけるだけなので、同期のミシェル(*3)や山下(*4)らがコーチとして頑張っているのを応援してきました。本当は一緒にやりたい気持ちはありましたけどね。仕事は3年目になっても変わらず忙しいですけど、なんとかリズムも掴めてきたので、うどさんに頼まれた時に、今ならやれると思ったんです。
実際にコーチになってみて、コーチはBLUE BULLETSを応援してくださっているOBを代表しているんだなと気づきました。BLUE BULLETSに強くあってほしい、魅力的なチームでいてほしいという気持ちでいてくださるOBはたくさんいるけれど、全員が同じ関わり方をするわけではないですよね。様々な関わり方がある中で、たまたま今年は自分がコーチという役目を果たしている。だから、五月祭、OB試合、リーグ戦と、ことあるごとにたくさんのOBや保護者の方から言葉を頂きます。チーム状況を心配して叱咤激励をいただくこともあれば、具体的なアドバイスを頂くこともあります。要するに、チームを託されているのだと思うんです。「ちゃんと魅力的で強いチームにしてくれよ。」って。そう思うと、プレッシャーも感じますが、エネルギーが湧いてきます。

(*1 10期鈴木直文。2013年度ヘッドコーチ。)
(*2 14期安西渉。2013年度ゼネラルマネージャー。)
(*3 23期宮澤脩一。2011年度ヘッドコーチ。)
(*4 23期山下尚志。2012年度ヘッドコーチ。)

 

「狂奔」を仲間に求める

コーチになるにあたって、「狂奔」というスローガンと「日本一」という目標を初めて聞いたときは、正直不安でした。”「日本一」には普通に頑張っていてもなれない。だから「狂奔」する。”という健太郎(*5)の考えはシンプルで分かりやすいけど、チームの皆にその思いを持ってもらうのは至難の技だろうな、と。
去年「学生日本一」を目指し、結果Final4で敗退したチームが掲げるには、”クラブチームを倒して「日本一」になる”という目標は遠すぎて、リアルにイメージできない人が多いのではないかと思ったんです。目標がイメージできなければ、そのために「狂奔」することももちろん難しいですよね。
幹部にはそう思ったことを率直に伝えました。でも、そこでも健太郎の考えはシンプルでした。
“皆が信じて行動することが難しいのであれば、信じさせるためにも狂奔する。自分の行動や言葉で、皆に信じさせる。”
それを聞いたとき、健太郎が目標に対して揺らぐことは無いだろうなと思って、納得しました。
リーグ戦前半を終えて、「狂奔」の姿勢はまだチーム全体に深く浸透しているわけではないなと思います。僕が幹部をしていたとき(*6)に強く感じていたことですが、主将や幹部は自分自身が頑張ることよりも、周りを同じように頑張らせること方が圧倒的に難しいんです。ただ、チームの数人が頑張っていても絶対に勝てるチームにはならない。成長速度の意味でも、試合の大事な場面で仲間を信じられるかという意味でも、どれだけチーム内お互いに求めあってこられたかが最後に勝敗を分けると思います。リーグ戦も後半戦に入りましたけど、全日を見据えるとまだ3カ月弱あります。まだまだ、求めあえるチームになれるし、コーチとしてそれを求めていく必要があると思っています。

(*5 26期金井健太郎。2013年度主将。)
(*6 樋浦は2010年度幹部を務め、リーグ戦では得点王となった。)

 

コーチの役割 ~選手を育てる~

例年東大のOFは、OFコーチとOFリーダーが連携を取りながら進めています。ただ、僕は平日練習に行けないので、毎日選手のプレーを見て指導することができません。だから今年は例年以上にOFリーダーである出戸(*7)の負担が大きいと思います。僕は出戸とコンセンサスをとって、みんなは出戸を見てまとまる。みんなから見て、誰が指揮をとっているのかっていうのは出戸というのが僕の理想だし、出戸もそう思って頑張ってくれていると思います。
今年はその出戸のこだわりもあって、各選手の個性を組み合わせた「13東大」(*8)というOFスタイルを目指しています。これが、僕からするとやっかいなスタイルで、ATもMFも、個人によってやってほしいことも評価する項目も違う。ある選手がやれることを別の選手ができないからといって駄目ってことはないし、その逆もない。だから、チーム全体に指示を出したり、選手を評価するのが難しいんです。上手くするにしたって、チーム全体としては大きな方針は示すけど、個人能力は選手に各自で考えて上手くなってもらわないといけない。
Aチームの中には、その選手の得意な分野においては、どうやって上手くすればいいのか僕には分からない段階に来ている選手がたくさんいます。だから僕に出来ることは、自分の見てきた選手や客観的な視点を活かして、その選手の能力をより活かすためのアドバイスをすることだと思っています。

上手い選手ほど頑固な奴が多いので、響かないことも多々ありますが、そういう選手は同時に上手くなりたいと強く思っているので、ちょうど本人の問題意識に合ったことを伝えられると一気に視野が広がることがあって、そのあとは勝手に上手くなってくれると思うんです。自分が現役だったときも、コーチの何気ない一言でプレーの幅が一気に広がったことがありましたから。
だからとりあえず自分が良いと思ったことを片っ端から伝えて、そのうちのいくつかでも選手の視野を広げることに役立てばいいなと思ってアドバイスしています。もちろん伝え方や優先順位は考えますけど。平日に練習に行けなくてインプットの機会は少ないから、その分限られた時間の中でそういう言葉をいくつ投げかけていけるかが勝負だと思っています。

(*7 26期(4年)AT#26出戸康貴。2013年度幹部。)
(*8 13シーズンのOFが掲げる、選手一人一人の個性を活かしたプレーを目指すスタイル。)

コーチの役割 ~タレントを活かす∼

そうやって選手を育てる一方で、もう一つ求められる役割がOFの戦術や試合での使い所を決めることです。この時期になると、みんなの個性も出揃ってきていて、選手のプレーパターンも大体想像できるようになりました。今までやったことがない戦術でも、選手の個性を組み合わせてこういう風に攻めたらこんなことができるってイメージが頭の中で作れるようになってきたんです。
自分が選手の時は、自分が想像もできないプレーを仲間がして、仲間が想像もできないプレーを自分がすることで一つの得点やプレイが生まれるのがラクロスの楽しさだと思っていました。でもコーチになると、自分じゃできないプレイを組み合わせて、本人たちが想像してなかったプレーを引き出せることが楽しい。そんな風にして、選手が点をとって嬉しそうにベンチに帰ってきたときは最高です。選手一人一人がタレントを持っているから、そのタレントをこれから残りのリーグ戦、プレーオフ、全日にかけてうまく発揮させてやること。それがOFコーチとして使命であり、腕の見せ所だなと思っています。

後悔しないために、やりきる

改めて振り返ると、OBや保護者の方々からも、現役の皆からも僕が頑張るモチベーションは十分に貰っているんですよね。僕は弱い人間だから、少し気を抜くと楽な方に流れてしまうけど、シーズンが終わった 時に「もっとできたことあったな」って思いたくないし、選手にも思ってほしくない。そんな状態で健太郎や出戸に「ありがとうございました」なんて言われても、虚しいだけです。大学の4年間って、人生の中でひとつのピークだと思うから、部員120人の人生に少しでも影響を与える存在として、選手たちが「やりきった」って悔いなく言える最後にしたい。そのためにやるべきことも、できることも、まだまだたくさんあります。

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