宿敵早稲田

早稲田というチームには、特別な思い入れがある。学生ラクロスではここ数年の実績でみて、最強といっていいと思う。他にもライバルと呼べる大学はあるけれど、僕がチームに戻ってからの3年間、いつも東大の前に立ちはだかるのは早稲田だった。10、11のFinalは言うまでもなく、新人戦とかあすなろとかの育成年代でも、サムライオープンなんかでOBチーム同士で戦った時も、早稲田には悔しい思いをさせられてきた。しかもただ強いだけじゃなくて、フィールド外でもすごく気持ちいい奴らだし、集団としても格好いい。個人的に好きなチームでもある。少し前までは武骨な感じが先行してたけど、今年のチームは技術も洗練されていて、強さに巧さが加わって本当に手強いと思う。そういう早稲田を倒して決勝に進めたら、最高に気持ちいいだろうと思う。ワクワクするよね。

個人的に意識しているのは、HCの嶋田さんの存在。やっぱり嶋田さんがずっと継続してチームをみてきたことが、今の早稲田の強さを支えていることは間違いない。僕が2010年にGMとしてチームに戻った時にやりたかったのは、まさにそういう仕事だった。最初の数年は、やっぱりまだ敵わないのかって思ったこともあったけど、僕ももう4年目だし、言い訳の余地はない。嶋田さんがもうすぐ勇退されるかもしれないって噂も聞こえてくるし、言葉が悪いけど「勝ち逃げ」は絶対させたくないんだよね。公式戦でお互いベンチに入って直接対決するのは初めてだから、すごく楽しみにしてる。試合中のベンチワークも、どうしても意識してしまうと思うね。ラクロス観も実は近いから、面白い駆け引きになると思う。

未完成のチーム

今年のチームの魅力は何かって聞かれたら、未完成なところって答えるかな。Final4を前にしてこんなに完成度の低いチームは、東大ラクロス部の歴史で無かったんじゃないかと思う。例年の東大なら、この時期はチームを綿密に仕上げにいくからね。こんなに仕上がってないまま、ここまで勝ち上がってしまったチームも珍しいんじゃないかな、と。良い言い方をすると、伸びしろがまだまだあるということ。僕から見ると、コイツらまだまだこんなもんじゃないはずだよな、と思う。技術もフィジカルも、歴代の東大の中では高い方だし、よく練習もしてる。でも、試合すると粗が出たり、甘さが出たりして勝ちきれないことが多い。歯がゆいけど、それが魅力だとも感じている。常に可能性を感じていられるというかね。きっと樋浦(*1)も久徳(*2)も、そう感じているんじゃないかな。これからチームがもっと強くなりそうだから、もっともっと良いチームになっている未来が見えるから、こっちも油断して放っておいてしまうことがよくあるんだよね。でもなかなか期待したスピードではうまくなってくれなくて(笑)。ダメなチームだと言う人もいるかもしれないけれど、僕にとっては非常に面白いチーム。難しくて面白い。コーチとしても、自分がどう関わるかで結構敏感に成長の方向やスピードが変わるから、やり甲斐があるよね。

学生日本一じゃなくて、日本一って目標を掲げたことは、大きいよね。こじんまりやったってファルコンズには届かないって、みんな分かっているから。未完成でありながら、結果を残していくしかないんだよね。まだまだ成長し続けたいって思いがあるから、逆に粗が残ってしまうのかもしれない。まだまだ無駄だらけだけど、これからどんどん洗練されていくんだろうなって思うし、FINAL4の後も強くなっていくはず。だからなんとしても早稲田を倒したい。このチームの完成形は、まだみせてもらってないから。全日本選手権決勝で完成形を披露できたら、最高だよね。

(*1 2013年度OFコーチ。2010年度副将。)
(*2 2013年度DFコーチ。2012年度DF長。)

狂奔

去年のシーズンが終わって新チームの体制を考えていた頃に、去年までお世話になっていたプロのトレーナーの方に、チームとしてフィジカルに対する取り組みを変えたいという相談をしていたんだけど、やってもらいたいことを色々お願いしていたら、一言、「覚悟の問題でしょう」と言われてしまったんだよね。ガツンと来たよね。「東大生が競技スポーツの世界で日本一を目指すということが、とても都合のよいプロジェクトだという自覚がありますか?」と。「生まれてから大学に入るまでの間にできたアスリートとしての差を、たった4年間で逆転しようとしているんですよ」って。その時、名指しをされたわけではないんだけど、完全に僕個人に向けられた言葉だと思った。チームに、選手達に覚悟が足りないって思ってたけど、そうじゃなくて覚悟が足りなかったのは自分だった。悔しかったけど、言い返す言葉がなかった。覚悟の据わってない奴がGMとして居座ってること自体が元凶だと思ったから、チームを離れようとさえ思った。

だけど何度も自問して、「いや、それでも日本一になってやるんだ。俺が日本一にしてやるんだ」っていうのが、結論だった。その気持ちで今年はやってきたようなものだし、そのためにどうすればいいのか今も必死に考えている。結局、何をしたら日本一になれるかなんて最初から分かっているはずはなくて、それなら“できることはとにかく何でもやる”ってことしかないと思った。思いついたことは、選ばずになんでもやってやろうって。とにかく何かヒントをもらえそうな人たちにひたすら会って話を聞いていたよね。ミシガンに行って勉強させてもらったことも、そう。結局自分自身が成長しなければ、チームを日本一に導くなんてできっこない。そういう単純な話だと思ってる。

金井(*3)から「狂奔」という言葉をチームスピリットとして考えていると聞いたのは、ちょうどそういう決心をして、がむしゃらに行動をし始めた頃だった。GMを続けるかとか、コーチになるかとか、チームへの関わり方はまだ何も決まっていなかったけど、俺が東大を日本一にしてやるんだって決意だけは固まってた。金井自身も主将になって数ヶ月、GMが職務放棄してたから(笑)、頼れる人もいなくて、でも日本一になるための道を必死になって探して、行動していたんだと思う。金井の気持ちは本当によく分かったし、「目標のために狂ったように走り回る」っていう意味の言葉がすごくしっくり来た。あの頃チームの中でこの言葉の意味を本当に理解できた奴は、僕と金井だけだったんじゃないかな。

GMを辞めてHCをやろうと決めたのは、それからしばらく経ってからだった。自信なんてなかったけど、本当の意味で危機感もって東大を強くしようという意志を持っている自分が中心に立って、周りを巻き込んでいくのが一番いいと思ったんだ。目標のために逃げも隠れもしないって覚悟を決める最後の後押しをしてくれたのが、「狂奔」って言葉だったかもしれない。それからもずっと、ことあるごとにこの言葉が僕を奮い立たせてくれた。金井が主将になって、あのタイミングであの言葉を口にしてくれたのは、本当に巡り合わせとしか言いようがない。

(*3 26期(4年)LG#45金井健太郎。2013年度主将。)

覚悟

覚悟っていうのは、別の言い方をすれば言い訳をしないことだと思う。自分の置かれている状況とか、今の実力とか、試合の結果とか、怪我とか、遅刻した時とか、何でもそうだけど、「〇〇だから仕方ない」ってことは一つもない。掲げた目標に対して今の自分たちが相応しくないとして、それには色んな理由とか原因があるだろうと思う。それは環境かもしれないし、運かもしれないし、自分自身の怠惰だったり元々の才能だったりするかもしれない。でもそういうことのせいで、目標に届かなくても仕方ないって思ってしまったら、絶対に届かない。目標達成に相応しい自分になるまで、そういう自分になっている未来を信じて、立ち止まらずに行動し続けるしかない。環境も、結果も、才能も、自分の外にあることも中にあることも、全部自分の責任で引き受けて、自分でなんとかする。それが覚悟。
未来のことは誰にも分からないから、いくらでも理想が実現することを信じていていい。これについては、信じる根拠なんて要らない。逆にそういう未来への信念があってこそ、今の行動に対する信念がうまれる。これは、願った結果が手に入ることを期待することとか、勝つことを当然視することとは全く違う。もちろん盲目的に信じてさえいればいいということでもない。誰にも分からない未来を手に入れるために、逆に現状分析は徹底的に現実的にやらないといけない。今の自分たちの実力、置かれた環境、競争相手を、全て現実としてまずしっかり受け止める。それも、覚悟。東大生が競技スポーツで日本一になるということの無謀さを、現実として認識する。でもそれを言い訳に、目標をあきらめたりしない。つべこべ言わずに、行動する。そういうことだと思う。

法政戦(*4)に負けて思ったのは、そういう覚悟をチームとしてもう一度問い直さなきゃ行けないんだ、ということ。僕らは学生ラクロスの世界ではそれなりに強豪として認知してもらっているかもしれないけど、スポーツ競技者としてみたら彼らの方がずっと優れている。そこを勘違いしてしまったら、後悔する結果になる。周りがなんと言おうとも、自分たちまで下馬評とか実績とか常識とかっていうものに左右されちゃいけないんだ。未来は誰にも分からないんだから。本当に強いチームなら、試合に負ける前に気づいて軌道修正することができるんだろうけど、僕たちはできなかった。それも現実。でも気がつく機会を貰ったんだから、これで変われなかったらウソだよね。

僕は、その時のチームに何かが足りない、という考えはしない。無い物ねだりになっちゃうし、足りないものを補ったら目標が手に入るという保証もない。今のチームの現状から、どれだけベターな未来を作れるかってことだけ考える。そういう意味で、今チームに求められているのは、試合に出ない人の覚悟かな。試合に出るってことが現実的に遠すぎる一年生、Bリーグで優勝して出し切ってしまった奴、ABの当落線上で今回ベンチに入れない奴とか、それぞれに頑張れない言い訳ができてしまい易いよね。でも、もっと早い段階で覚悟を決めて泣くほど練習してれば、とっくにAチームだっただろうなって奴もいる。このチームは試合に出られない奴の方が圧倒的多数なんだから、出る出ないだけをモチベーションにしてたら、足りない。試合に出ない奴が、出られないことを言い訳にせずに成長し続けるのが大事だし、どれだけチームの勝利を自分の責任で引き受けようとしているかが大事なんだ。一人一人のできることには限りがあるけど、一人一人の行動の集積でしか、チームは変わっていかない。今年のチームの終わりが嫌でも見えてきたこの時期だからこそ、試合に出ない層の覚悟を、もう一度作り直してほしいんだ。

もちろんコーチとチームスタッフも含めてフィールドで戦う34人は、そいつらの思いを背負って戦う責任がある。早稲田戦に向けては、実際にチーム全員で準備してきた。覚悟が決まってない奴は、フィールドに立つ資格がない。僕も改めて覚悟を決めて、試合終了まで勝利を信じて戦い切りたいと思う。まだまだこのチームと一緒に狂奔していたいよね。

(*4 2013年度リーグ戦最終戦。東大は法政大学に敗北し、ブロック2位通過となった。)

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