因縁の相手、早稲田

去年のFinal4早稲田戦のことは、今でも本当に鮮明に覚えている。3Qの途中、田村さん(*1)が入っていたときに連続で失点して、そんな流れを変えようという意味で投入された。だけどそこで俺は浮足立ってしまった。調子が悪かったわけではなかった。法政戦(*2)が終わって、Final4合宿ぐらいまではすごく調子が悪くて、田村さんとなっきゃむさん(*3)とAチームのゴーリーの枠を争って、Aチームから外れる危機もあった。それを自分なりに乗り越えてFinal4を迎えたという自負があって、3Qで入るときには強い気持ちを持って入ったつもりだった。でもそれは、早稲田に簡単に打ち砕かれた。早稲田の選手のシュートが立て続けに入って、そこから流れを変えることができなかった。4Qの最後、東大はもう3人ぐらいマンダウンで、それでもボールを奪いにいって。もう周りを見ても敵だらけ。「終わった」と思った。試合終了の瞬間、フィールドに立っていたのは田村さんじゃなくて俺だった。自分は流れを変えるために出ていたのに、結局何も変えられなくて、むしろ得点差を広げられて負けたということが情けなかったし、先輩には本当に申し訳なかった。この時が、俺がゴーリーになってから一番、「自分は“弱い”」と感じた瞬間だった。技術的な上手い下手とはまた違う。大事な試合の大事な局面で、自分の力を出し切れるか。例えばゴーリーなら、止めるべきシュート、仲間に止めてくれるだろうと思われているシュートを絶対に止めること。苦しい場面で堂々と構えられる、“強い”ゴーリーにはまだまだ自分はほど遠いということを痛感させられた。

4年生になる前に、出戸さん(*4)に言われた言葉がある。「服部(*5)は、2年からリーグ戦に出て、お前は3年生で初めて。服部は3年の時には、全日の決勝でプレイした。服部はその経験を踏まえて、今年こうだったから来年はこうしようって考えることができる。でもお前は4年で初めて1本目になって、服部ほど経験はない状態で結果を出さないといけない。」これを言われたとき、実際の技術以上の差を感じた。それまでは、技術があることが一番だと思っていた。でもそれだけじゃない。技術は練習をすれば伸びる。それよりも、ただ練習するだけでは伸びない、自分が持つものを本番で出し切る力、この力をつけようと思って始まったこの1年だった。このことに気づけたのは、Final4での経験があったからに違いない。俺の早稲田との戦いはあの時からずっと続いていて、あの試合はトラウマでもあるけど、でも同時に今年1年のモチベーションでもあり続けている。

(*1 26期田村涼。2013年度G長。)

(*2 2013年度リーグ戦vs法政。序盤リードするも後半逆転を許し、5-8で敗北。)

(*3 26期中村弘輝。)

(*4 26期出戸康貴。2013年度OF長。)

(*5 2014年度早稲田大学ラクロス部4年生G服部俊介選手。2014年度日本代表。)

ワールドカップで見えた世界

7月のデンバー遠征は、本当に有意義だった。現地のオープン大会に出場したことももちろんだけど、それよりも、世界最高峰のラクロスを目の前で観ることができたのは非常に刺激になった。特に印象的だったのは、決勝戦のカナダ代表のゴーリー。アメリカ代表の選手達のように特別有名な選手ではなかったけど、あの試合ではあのゴーリーが一番活躍していたし、一人で流れを断ち切って、一人で流れを作っていたあの姿は、自分の理想の姿だと思った。予選で負けたアメリカに決勝戦で勝ったカナダ代表には、夢ももらった。それから個人的に嬉しかったのは、会場で偶然、前から憧れだったアメリカ代表のJohn Galloway(*6)に会ったこと。めちゃくちゃテンション上がったし、ラクロスへのモチベーションもかなり上がった。リーグ戦を前に、いいイメージを得られたと思う。また、日本代表選手達のプレーする姿を見て、自分もあの舞台に立ちたかったという悔しさや、きっと死ぬほど緊張するであろうあの舞台で活躍することへの敬意など、様々なことを感じた。自分と同世代の選手も沢山いて、改めてあいつらに負けたくない、と思った。

(*6 2014年度USA代表ゴーリー。2014年8月現在MLL(Major League Lacrosse)のRochester Rattlersに在籍している。)

“強いゴーリー”たれ

他大の同期ゴーリーたちの存在は、俺の中でやっぱりでかい。早稲田の服部とか慶應の安藤(*7)とか、俺の代のゴーリーは上手いやつが多い。

慶應の安藤と初めて会ったのは1年生のときウィンター(*8)が終わってからだった。初めて安藤のプレーを見たときは衝撃的に上手くて、その時からいつも自分の一歩先を行く彼は、憧れの存在であり、且つずっとライバル視してる相手。

早稲田の服部も2年生の頃からたまに話すようになって、3年のときくらいから代表活動とかで良く会うようになって仲良くなった。

試合中にはフィールドの正反対、視線の先にはあいつらがいて、「あいつまた止めたな」「あのシュート止めるか」とか思いながら試合してるし、実は結構ちゃんと意識して見てて、例えば練習試合の後とか、「あのシュートはどうだった」とかお互いに話したりもする。ゴーリーという特殊なポジション柄、他大とのつながりもあって、お互い切磋琢磨できていい関係にあると思う。だけどもちろんライバルだから、上手いゴーリーが多い中で、これからのシーズン本番、あいつらには負けたくない、俺が一番活躍するって気持ちも強い。特に開幕戦は、関東中のラクロッサーが俺たちの試合を観ているわけだから、勝って今年の東大の強い姿をお披露目したい。それと同時に、観客に「あのゴーリーすげぇな」って思われるようなプレイをしたい。チームとして勝ちたいのはもちろんだけど、今まで自分自身東大のゴーリーとして、プライドを持ってやってきた訳だから、自分が活躍して勝ちたい。特にゴーリーというポジションの俺が活躍しないと、東大というチームの勝ちには繋がらないと思うから、勝つために全力を尽くす。

ゴーリーの俺にディフェンス陣が求めることは、打たせていいシュートを止めること。そしてもう一段階上として、試合の流れが悪いときに、厳しいシュートを1本でも多く止める。そのセーブで試合の流れを変えることができるはず。もし自分の中でリズムが崩れだしたら、落ち着いてリズムを作り直せばいい。パスだったり、視野をとることだったり、正確な判断をすることだったり、セーブには直接つながらないことでも、自分の中でリズムを作り直してパフォーマンスをあげていくイメージはある。

早稲田というチームは個人的に大好きで、交流があるやつも少なくはない。そんな早稲田と開幕戦で戦えることは純粋に楽しみだし、早稲田もきっと楽しみにしているんじゃないかな。いい緊張感の中で、まずはこのゲームを楽しみたい。これまでは、他の奴らの方が俺よりも強かった。でも、開幕戦では絶対にそれを逆転して、チームとしても、俺個人としても、絶対に勝つ。そして今年こそ、フィールドで自分の持てる力を出し切れる“強いゴーリー”になる。

(*7 2014年度慶応大学ラクロス部主将安藤圭祐選手。2014年度日本代表。)

(*8 新人戦ウィンターステージ。)

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