流されない

俺のラクロスに対するモチベーションの根底には親に対する気持ちがある。

父親は大学で教える立場で、部活のせいで勉強が疎かになる人を見てきたから、最初部活に入ることに関してかなり牽制してきた。せっかく日本一の大学に入ったのだから、学業を全うする責任があると言われて。確かにそうだなと思って、最初は運動系のサークルに入って勉強に集中しようと考えていた。

でも新歓でラクロス部や他の運動会のビデオを見て、気持ちが変わった。それまで小中高12年間サッカーを真剣にやってきたこともあって、どうせスポーツをやるなら全力でやらないと意味がないと思った。それに、高校の部活で勝てなかった経験から強いチームに入りたくて。全員が0からのスタートで、努力次第で日本一にも登りつめられるラクロス部に魅力を感じた。結局、親の反対もあったけど、自分のわがままを通して入部を決めた。

最初は嫌がっていた両親もなんだかんだ開き直って、自分のことを応援してくれている。試合を見に来てくれるし、リーグ戦後に電話もしてくれたりする。弟が自分の影響でラクロスに興味を抱いてくれたことも素直に嬉しかった。家族が応援してくれていることを実感して、よし、俺はこのままラクロスを頑張っていいんだな、っていうモチベーションも得られた。

こういう経緯で学業と部活を両立する道を選んだからには、どっちも成功しないと親に顔向けできない。だから、ラクロスにも勉強にも妥協せず取り組む意識を持っている。両方頑張ることが自分の生活のメリハリにもつながっている。

日本一を目指すチームだから大学生活のほとんどを部活に捧げている人もいるわけで、もちろんそういう考え方を否定しているわけではない。そういう人がいるのは当たり前だけど、それに流されずに、俺は俺で一つのスタイルでやっていこうって1年生の頃からずっと思っている。

メンタル

後輩に、上手くなるために何をしているかと聞かれると、いつも答えに困る。もっと努力してきた人はいるし、特別何かをしてきたというわけでもないから。

ただ、自分のメンタルを上手く調整するようにはしている。

2年生のときリーグ戦の途中に、とってぃーさん(*1)に「あまり2年だからと気負うな。結局フィールドに立っているということはチームで一番上手いということ。1つ簡単なミスをしたら、どうせスタンドのお前らがここに立っていても同じようなミスをするだろうという気持ちでやれ」と言われた。なるほどと思って、それからはそのメンタルで試合に臨んでいる。練習中はミスをすると結構反省するけど、試合中はすぐに忘れて切り替える。一方で、どんな些細なことでも上手くいったらそれを喜ぶようにしている。

このメンタルが、今年の開幕戦(*2)での得点につながったんだと思う。試合が終わってからも、自分のミスが一つも思い出せないくらいで。後で映像を見たらここ微妙だったなっていう場面はあったけど、当日はミスを引きずることなく、良いリズムでしっかり結果が出せた。

あと、何か上手くいっていなくても、調子が悪いとは考えないようにしている。この競技を始めてたかが2, 3年で思うようにいかないのは、スランプとかではなく単純に下手だということだから。それに、自分の中で言い訳っぽく聞こえてしまう。

(*1 27期都外川識志。2014年度主将。)

(*2 2015年度関東学生リーグ開幕戦vs慶應義塾大学。7-6で勝利したこの試合で、張は先制点を決めた。)

他人のミスは自分のミス

これは元々そういう性格なんだけど、上手くいかなかったのがたとえ他人のせいでも、まず自分が悪いのかなと考える。それこそ試合に負けたという大きなくくりでも、自分があの場面で得点していたらなって思う。それくらい取れよっていうちょっとした相手のキャッチミスに対しても、俺が取りやすい場所に投げていればなと、自分に落とし込む。だから、基本的に自分に満足しない。1年生の頃はB FINAL(*3)、2年生の頃はリーグ戦に出て、上手くはいっていた。でも心の底から満足したことは一度もない。

その分練習がちょっと楽しくないなと思い始めた時期はあった。それからは練習中の自分のナイスプレーに対して、小さいことでもよしって思うようにしている。そうやって自分の中でちょっとテンションを上げつつ、完全には満足しない。これが自然と、常に成長志向を持つことにつながっているのかなとは思う。

こういうと他人のミスを自分に還元することは美徳のようだけど、それだけではダメだなと最近は思う。他人への不満を自分への不満に変えているにすぎないし、学生日本一ってチームの中で一人が頑張るだけで達成できる目標ではないから。聞こえはいいけど、行き過ぎると他人を見捨てていることと変わりはない。もっと他人のプレー全般や部活への姿勢に対して、自分から働きかけなきゃいけない。

(*3 Bリーグ関東FINAL。毎年、各校のBチームが自主的に行っているリーグ戦の決勝戦。)

チームを引っ張る責任

自分から働きかける、というのは、3年生になってから大きな課題になっている。

今シーズン初期の次期主将決めミーティングで、俺が主将だったらっていうのを真剣に考える機会があって。自分がやるのが一番良いという考えにはどう考えても至らなかったから、立候補しなかった。それよりは自分のプレーに集中して、自分が上手くなることだけに集中すべきだと結論付けた。

でも今思えば、それは2年生の考え方だった。室井さん(*4)にも指摘された。それだけでいいのか、チームの中で自分のことだけ考えていていいのかって。絶句した。その視点を持ったことが全くなかったから。

こんな感じでシーズン初めはチームの中での自分の責任を自覚していなかった。今年は3年生が頑張らないといけないシーズンだよ、とか、今年頑張らないと下手すると2部に落ちて最悪の4年を迎えることになるよ、とか言われたけど、あまり素直に受け入れられなくて。それが悪いのは結局4年生じゃん、と思っていたから。今年は最高学年の厳しい雰囲気がそこまでなくて、チーム全体の規律みたいなのも足りていなくて。単純にAチームの4年生が少ないのもあったし、今までリーグ戦に主力として出ていた人はさらに少なかった。4年生に対して、もう少し引っ張ってくれないかな、4年生が3年生に依存している形って良くないんじゃないのかな、と漠然と思うだけで、気持ちは胸にしまっていた。

でもリーグ戦を戦い始めてようやく、そういう環境に下の学年も依存していたことを実感した。リーグ戦やAチームを経験したことがない人は、今年のAチームが例年のAチームや早慶のレベルに比べてどうなのかを実感できていなかった。「こんなものなんだ」と思ってしまっていて。俺とか去年リーグ戦を経験してきた人間が、チーム全体の目線を上げて、日本一になるためのレベルを未経験者に求めていくことを忘れていた。むしろ、のびのびとやっていて甘えていたのは俺の方だった。だから最近は、今までその環境に甘えていた分、チームの天井を突き上げていかないといけないし、チームを引っ張っていかなきゃいけないと思っている。4年生がどう、とか思わなくなってきた。3年生も4年生も結局、皆頑張らなきゃいけない以上立場は一緒だから。

そうやって同じ視点に立った時、同じポジションとして特に、角埜さん(*5)にもっと頑張って欲しい。角埜さんは俺がこの部活に入ってから辿ってきた道をほぼ同じように歩いてきた人で。その点どこか自分の先を行く人というか、自分の来年の姿なんじゃないかなと思っていた。学年差もあるし、チームにおいて対等な存在として捉えたことがなかった。でも、もう同じ土俵に上がったと思うようにしている。去年リーグ戦で確実にチームの戦力になっていた分、今年は去年以上にチームを引っ張る存在であって欲しい。切磋琢磨する関係でありたいし、一緒に活躍したい。

(*4 27期室井啓介。2014年度副将。2015年度ヘッドコーチ。)

(*5 28期(4年)MF#15角埜裕基。2015年度副将。)

転機

4年生っていう肩書きってマイナスでしかないと思う。頑張っていても4年生が頑張るのは当たり前で、でも同じくらい2年生が活躍していたら2年生の方が評価される。ミスをすると2年生だと仕方ないという風になるけど、4年生だとチーム全体が落胆する。来年俺はどうせそういう立場になるんだから、今のうちにチームを引っ張る覚悟を持つ必要がある。

そういう意味では今が4年間の中でターニングポイントだと思う。人生の中でもそうかもしれない。同じミスが繰り返されていたり情けないプレーをしていたりしたら、相手が誰であろうと厳しく指摘する。上手くいっていない人には上手くいくような適切なアドバイスをして、上手い人にはより高いレベルのプレーを求める。こういう自覚を持ったことは今まで一度もなかったから。

シーズン初めは自分のプレーしか考えていなかったから、去年の慶應の木島さん(*6)をプレーの基準に置いていた。存在感が凄まじくて、まさに慶應を引っ張っている感じがして。実際FINAL4(*7)で直接対峙して、 1on1で抜かれてランシュー(*8)ぶち込まれて、次元が違うことを痛感した。

でも今はプレー面だけでなく行動の基準として、とってぃーさんや室井さんを指標としている。3年生でもチームを動かしていた存在だったなって。他人に干渉するという点でどんな感じだったのかなと思い出しつつ、自分がこれからどう行動していくか考えている。

(*6 2014年度慶應の4年生MFとして活躍した木島薫選手。)

(*7 2014年度FINAL4vs慶應義塾大学。5-12で敗北した。)

(*8 ランニングシュート。)

今年のFINAL4

今までも中高の部活の引退試合で泣いていたけど、去年のFINAL4で流した涙は申し訳ないなっていう気持ちがすごく入っていた。別れの悲しみというよりも、悔しさや情けなさの方が強かった。最後の最後に足を引っ張っちゃったっていう思いがあって。木島さんに1on1で抜かれた失点も責任を感じていたし、他にも失点につながったミスがあって、情けなかった。それでも室伏さん(*9)やとってぃーさんは、「お前にちょっと頼りすぎた部分もあったよ」と言ってくれて。期待に応えられなくて余計情けなくなってしまった。そういう涙だった。

でも今年は違う。自分は頼られる立場にある。自分がチームを引っ張って周りを上手くする責任があることをひしひしと感じる。去年はDFMF(*10)でOFに関しては指をくわえて見ていることしかできなかったけど、今年は自分が点を取るし、点を取らせる。誰からも活躍したって思われるような存在にならなければならない。

今年のリーグ戦もここまで戦ってきて、満足なんてしていない。まだまだもっと、自分にできることがある。

俺がチームを勝たせる。この気持ちは、部員の誰にも負けない。

(*9 27期室伏祐輔。2014年度DF長。)

(*10 DFに特化したMF。)

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