学生コーチという選択

去年の11月頃に初めて佐藤(*1)が31期から学生コーチを出す話をした。「俺らの代は人数が多いから4年でリーグ戦に出られない人が絶対に出てくる。それなら、選手以外の形でもチームに貢献できる役割を与えたい。」佐藤が同期全体に向けてこの話をした時、自分のことを言っている気がした。だから実際にやってくれないかと言われたときも「やっぱりか」って感じで、驚きはしなかった。

学生コーチを作る話が出て自分が一番やりたいことを考えた時、自分の中には引退する時に後悔していたくない、わくわくしていたいという思いがあった。それは必ずしも自分の活躍だけでしか得られないものではなく、チームが勝つその瞬間に得られるものなんじゃないかと思った。自分も含め俺らの代は2年生の時にコーチがいない時期を長く経験したやつが多かったし、共にBリーグを戦い抜いた(*2)同期の努力を見てきた。自分自身を振り返っても、2年の時に勝藤さん(*3)や森内さん(*4)にお世話になったという感謝の思いがずっと力になっていた。だから、学生コーチというポジションに4年目のシーズンを捧げて、同期や後輩を支えることで日本一を目指すのもいいかなと思えた。そして、やるからにはこの一年間誰よりも楽しんでこの選択を後悔しないようにしようと誓った。

実際にコーチとしての日々が始まると、コーチには誰かから与えられる仕事など一つもないこと、全て自分で考えて選択しなくてはならないことを痛感した。それに、自分のやっていることが正解なのかどうかはやってみなければわからないし、正解かどうかは選手の成長っていう自分が直接体感できない部分に現れてくる。そこがすごく難しい反面、面白いポジションだと感じている。早稲田との練習試合で大田(*5)がランシューを決めた時とか、Bリーグの立教戦で牧野(*6)がランシューを決めた時とかめちゃくちゃ嬉しかったし、これから先も試合の命運を分けるシーンで自分が育てた選手が活躍する姿を想像するとすごくわくわくする。

(*1 31期(4年)LG#56佐藤隼。2018年度主将。)
(*2 2017年度Bチームは31期が中心となり、Bリーグ全日優勝を達成した。)
(*3 29期勝藤洋平。2016年度BC学生コーチ。)
(*4 29期森内宏樹。2016年度BC学生コーチ。)
(*5 33期(2年)MF#81大田脩斗。)
(*6 32期(3年)MF#4牧野宗太郎。)
 

Bチームの選手へ

今年はチーム全体として”Don’t mope.”という言葉を掲げている。直訳すると「気落ちするな」「下を向くな」という意味で、要はプレー中にミスした時に落ち込む時間があったらGBだったりライドだったり、次のプレーにすぐ切り替えようということだ。これを自分なりに拡大解釈した時に、Cチームのヘッドコーチをやっていた頃(*7)に強調していた「ラクロスを楽しむ」ということに通ずるものがあると思った。どういうことかというと、日々の練習ではうまくいかないことの方が多いと思うけど、目標とする舞台で活躍する姿を想像したり、ラクロスを始めた頃の純粋な気持ちを思い出したりしながら、どんな時でも楽しむ気持ちを忘れずに、成長を止めないでほしいということ。

とはいえプレイヤーだった頃の自分は、現状を受け入れすぎてmopeしていたように思う。あの人には敵わないとか、同期のあいつは最初からうまかったとかいう諦めの気持ちがなかったと言えば嘘になる。でもその姿勢は間違っていた。3年間、適当にでも練習していればある程度ラクロスはできるようになるけれど、そのレベルとAチームには大きな差がある。もし俺にあと1年あったら1年後Aチームで活躍している自信はあるし、あと2年練習すれば確実にAチームにいるだろうと思うような3年生もいる。でも、俺達には4年間しかない。4年間で日本一のレベルに達しなきゃいけない。

(*7 2018年6月にBチームとCチームが統合するまで、杉本はCチームヘッドコーチを務めていた。)

BチームはBリーグで慶應に負け、立教に引き分けた。Aチームもリーグ戦初戦で明治に引き分けて、AチームもBチームも、もう1戦も負けられない状況になった。今Bチームにいてリーグ戦に出られていない選手の中にも、プレーオフまで進めばAチームで活躍できるだろうと思う選手はいるし、2,3年生は今年のリーグ戦に出られるかどうかが来年以降のチーム内での立ち位置に大きく関わってくる。4年生はもちろん必死でやっているけど、2,3年生ももっと今年の結果を自分事として考えて、真剣にラクロスに向き合ってほしい。

Bチームの選手に今伝えたいことは、勝手に自分の限界を作らないでほしいということ。確かにみんな危機感を感じながら頑張っていると思う。でも、もっと必死にやってほしいし、もっと必死になれると思う。練習メニュー1個1個に対してもっと突き詰めて意識するポイントを考えられるし、プレーの緻密さにももっとこだわれる。練習外の時間の使い方・絶対的な練習量、妥協していないだろうか。成長するためにやれることはまだまだたくさんあるはず。それでももし限界を感じたら、Bコーチを頼ってほしい。どうしようもなくなってしまったときの拠り所として、俺たち4人(*8)がいるから。

(*8 現在Bチームは杉本を含め4人のコーチが指導している。)

 

同期への想い

学生コーチを頑張る原動力は、共に戦ってきた同期を支えて日本一を掴むことと、これからのBLUE BULLETSを担う後輩を育てること。その2つに加えて、「原(*9)を日本一にしたい」という想いが自分の中にある。原もプレイヤーの道を捨ててコーチを選んでいるから、俺にとって原は運命共同体のような存在。だから俺たちは共に全力でやらなきゃいけないし、手を抜いたら当然お互いへの信頼もなくす。隣にいて感じるのは、原はチームのことをすごく考えているということ。俺はどうしても楽しいことに流されたり、短期的な目線でものを考えたりしてしまいがちだけど、原は締めるところはしっかり締めてくれるし、いつも先を見て行動していて見習わなきゃいけないなと思う。Bチームのヘッドコーチとして苦労している姿を一番見ているから、絶対に勝たせてあげたい。

もともとCチームのヘッドコーチだった俺は6月のBCチーム統合以降Bチームのアシスタントコーチになった。選手層が違う分Cチームのコーチとしてやるべきことと、Bチームのコーチとしてやるべきことは違うし、原・凱斗(*10)・幹司さん(*11)とBチームのコーチ陣が揃う中で自分は何をしたらいいのか、分からなくなることがあった。それでも何かしなきゃと思って、Bチーム全体を見ている原1人では手の届かないところを全部カバーすると決めた。結果を出せずに苦しんでいる選手一人一人について面倒を見ているうちに、原に「ちゃっきー(*12)がいてくれるから、俺は安心してチーム全体のことを考えられる」って言ってもらえて、自分のやってきたことは間違ってなかったのかなって思えた。シンプルだけど、苦しみながら頑張っている選手に全力で応えてあげるってことが一番大事なんだなって改めて気付いた。

(*9 31期(4年)MF#8原崇文。2018年度Bチームヘッドコーチ。)
(*10 31期(4年)LG#40平井凱斗。2018年6月からBチームディフェンスコーチに就任した。)
(*11 30期一ノ瀬幹司。2018年6月からゴーリーコーチに就任し、Bチームのゴーリーを中心に指導している。)
(*12 杉本の愛称。)

 

“ベンチ入りした20名は

ベンチに入れなかった仲間たちの分も

全力でプレーする義務がある

ベンチ入りできても

打席に立てない仲間もいる

グラウンドに立ったものには

全力で走り抜ける権利がある

『義務と権利』

その言葉を忘れるな”

 

メジャーリーガーになった大谷翔平選手の母校である花巻東高校野球部の監督の言葉で印象に残っている一節だ。この一節を読んだ時試合に出る同期に送りたいなって思った。ベンチ入りする選手には、ガンガンプレッシャーをかけに行って、GBを追いかけて、シュートを打つ権利があるし、スタンドにいる部員たちの分まで走りきる義務がある。グラウンドに立っている選手は信頼している仲間だから、俺は安心してスタンドにいられる。俺のために勝ってくれなんておこがましいことは言えないけど、試合に出る選手はスタンドの部員全員からの信頼を背負って、試合ではどんな局面でも思いっきりラクロスを楽しんで俺たちの想いに応えてほしい。

 

原、佐藤をはじめ同期のことは本当に信頼している。だからこそ自分が何もしなくても日本一に連れてってくれるんじゃないかって甘い考えが浮かぶことがあった。でも明治戦に引き分けたことで、1人でも現状に満足してしまう人がいたらチームは勝てないと思い知らされた。自分に課された最大の使命は、Bチームからより優秀な選手を1人でも多く育ててAチームに送り出すこと。それはリーグ戦が始まって、Aチームのメンツが固定されつつあるとしても変わらない。俺は最後までコーチとして、Bチームのみんなの成長を信じているし、みんなをチームの勝ちに貢献してくれる選手に育てるために奔走し続ける。

 

学生コーチになることを打診された時に、佐藤から感じた「コーチをやってもらう代わりに、俺たちが」っていう覚悟に応えたい。コーチという立場を与えてくれた佐藤や堀さん(*13)、コーチとしてチームに居場所を与えてくれている同期や後輩に恩を返さなくてはならない。

同じ立場でフィールドに立てなくても、共に戦い続ける。

(*13 29期堀友洋。2018年度ヘッドコーチ。)

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