東京大学運動会ラクロス部男子第26期FOer / 舟橋 光

一本目
  自分は去年、フェイスオファー(以下FOer)2本目としてAチームにいましたが、試合ではベンチから松裏さん(※1)が勝つのをずっと見ていただけだったし、時々試合に出してもらった時も、正直自信もないままやっていました。でも、今年は自分がFOer1本目になったこと、 FOコーチがいなくて頼るものがなくなったことが、逆に自分を高めるきっかけになりました。最も大きな成長の契機になったと思うのは、今年の五月祭試合(※2)。早稲田にFOで完敗して、自分のFOerとしての未熟さを痛感したし、俺が勝たないと試合も厳しくなるとも感じました。それまではFOをやりつつ、MFとしてフィールドプレーもずっとやっていたんですけど、このままじゃ中途半端なFOerで、中途半端なMFになる、と思いました。その時、自分がどちらを極めればチームに貢献できるか考えたら、東大を背負うFOerとして、1番強いFOerを目指すことだな、と。もともとFOをやっていくということは決めていたけれど、今のままじゃ全然こだわりも足りないし、もっと専門でやらないとだめだと考えるようになりました。
 それからは、自分で考える量が増えましたね。去年まではやっぱり受け身な部分が多くて、基本的には松裏さんの形を真似てやっていたんですけど、今年はスタンスも、力の入れ具合も、技も、ひとつひとつ細かい所から自分で考えてやっています。五月祭試合を経て、自分が東大FOerの1本目だと強く感じるようになって、それからはそれに見合う実力をつけるために必死でした。あの時の負けが自分を変えてくれたと思います。

(※1:24期FOer松裏直樹。昨年の関東学生リーグベストFOer。)
(※2:毎年5月にある五月祭の時に行われている招待試合。今年も早稲田大学を招待して行い、7-6で東大が勝利した。)





東大FOer
  「東大のFOerは強くあるべき」っていうのは、ここ数年の結果からも、他大の他のFOerの評判からもひしひしと感じています。俺も、シーズン序盤、「東大FOer」1本目としてのプレッシャーがありました。五月祭試合にFO専門の練習をしないまま臨んで完敗して、自分は「強い東大FOer」ではなく、見合うだけの実力が全然ないと思い知らされて、「東大FOer」の看板を背負う意味、みたいなのを凄く感じさせられました。
 東大のFOerが強くあり続けている理由として俺が思うことは2つあって、ひとつは、「東大FOerは強くあれ」という前提が伝統としてあること。「東大のFOerたるもの、学生ナンバー1のFOerを目指せ」っていう絶対的な目標が常にあって、その実力に達するまでこだわり抜くし、努力する文化があります。FOで試合に勝てるって本気で思ってやっています。ATのパフォーマンスが良くて勝った、MFで勝った、DFで勝った、Gで勝った、って言える試合があるのと同じように、FOで勝つ試合がある。そうやってFOに深くコミットする文化が東大にはあると思います。
 もうひとつは、08、09の伊部さん、10の小橋さん、去年なら松裏さんのような強い先輩が毎年いて、その人達のプレーを下の代のFOerが間近で見られて、考え方や技を継げること。強い先輩からたくさん良い影響を受けて、さらにそこから自分に合う型を模索していくことができます。だから毎年均質なFOerが生まれるわけではなくて、例えば去年の松裏さんと今年の俺とでも、FOの型や考え方は違います。毎年試行錯誤して、どんどん強くなる。一人ひとり型も違うし、やっていることも違うけれど、やることの深さとかこだわり抜くレベルはみんなそろって高い。ナンバー1を目指した時点で、自然とそうなるのだとも思います。
 FOへのこだわりの強さは、他大の選手でも何回か勝負すれば分かります。技の強さとか、熟練度とかから。これはFO独特のもので、FOは本当に一瞬で勝負が決まるから、一瞬でも無駄な動きはできないんですよね。俺は自分で拾いきってポゼッションして初めてFOで勝ったって言えると思うので、その一瞬の勝負に何がなんでも勝つために、体の隅々の動作にまでこだわっています。自分がこだわればこだわるほど、相手がどれくらいこだわっているかも分かるんです。そして、負けるもんかって気持ちも強くなります。
 FOへのこだわりという点では、例えば、早稲田には早稲田なりの、強くて尊敬できる文化があるって思います。強いこだわりを持ってやっている人と勝負するのはすごく楽しいです。そして、そういう人には、より一層負けられません。




自信
  俺がFOにおいて練習中や試合の時に大事にしているのは、『真っ向勝負』。これは2010年に、今のヘッドコーチの山下さんが主将の時に掲げていたチームスピリットで、「自分に勝つ」、「目の前の敵に勝つ」、「仲間に求める」ということ。「自分に勝つ」っていうのは、俺の中では、練習中から、自分に厳しく、負けた悔しさを思い返しながらやること。FOは、勝ったか負けたかが露骨に分かるし、勝率がはっきりと数字として残るので、負けた時の悔しさは忘れないし、負けたことを思い出す度に、次は絶対負けないって強く思える。そして、「目の前の敵に勝つ」っていうのは文字通り、相手のFOerに勝つこと。試合の時だけじゃなく、俺は練習中の1回1回の勝負でも負けたくない。負けず嫌いだから。そういう所は、FOerに向いているのかもしれないですね。
 そうやって、自分で模索しながら練習して、試合で相手と戦って、その度に自分の成長を確認しながらここまでやってきました。最近では自信もついてきて、試合の時でも揺るがないメンタルを持てるようになりました。あれだけ練習してきたし、これだけこだわりも持ってる、だから負けるはずないって気持ちを強く持って試合に臨んでいます。それに今は、自分のプレーについて考えるだけでなく、FOリーダーとして、他のFOerに自分の考えを伝えることも大切だと感じています。また「東大FOチーム」として、自分で拾いきれるのか、周りにwingがいても拾えるか、そのためにはFOチームとして何を磨かなきゃいけないのか、そこまで考えて責任負うのが東大FOerの仕事だ、と思っています。2年生FOerの大川とかが、FOerとしてのこだわりを持てるようになってきて、日々成長も見られて、たのもしいなと思いますね。



仲間に求める
  今シーズン、FOは勝率に特にこだわってやっていて、リーグ戦の試合でも、目標としていた勝率を達成することができていて、FOer個人としては、今までやってきたことに手応えを感じています。でも一橋戦(※3)で負けて、FOで勝っても、それがチームの勝利に結びつかないと意味ないな、と考えるようになりました。FOにどれだけこだわりを持って努力しても、俺が拾ったボールが、仲間がシュートを決めるところまで繋がらないと意味がない。ささいなミスでターンオーバーするのもFO1本分を失うことだから、もっと自分からミスをしないよう求められたし、もっと「仲間に求める」姿勢を持っていきたいです。
 自分ができないことを他人に求めたり、指摘したりするのって誰だって多少なりとも抵抗がある。だけど、できる奴しか指摘できない組織は、その人のレベルまでしか達しなくて、その先にはいけない、絶対に強くなれないと思います。でも、「こだわり抜く」っていう姿勢については、自分がどんなレベルにあっても、何に向き合っていても示せると思うんです。だから、俺はFOerっていう特殊な立場だけど、チームが勝つために必要だと思うことはもっと周りに要求していきます。プレーのことはもちろん、日々の思考についても。パフォーマンスを変えるには、日々の練習を変えないといけないし、考え方にもこだわらないといけないと思う。これが俺なりの「徹(つらぬきとおす)」ってやつですね。チームとして、もっと上のレベルに行きたいから、自分ができなくても、相手に言う。そして、他人に言ったからには、自分はもっと努力する。俺は絶対にFOでチームを勝たせます。

(※3:今年のリーグ戦第3戦vs一橋大学。一橋大にリードされて前半を折り返し、4Qで同点まで追いつくも、最後に相手のシュートが決まり、7-8で負けた。)




Editted by Ami Usui
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