東京大学運動会ラクロス部男子第25期主将 / 浦山 卓弥


 学生日本一になって喜ぶ。
シンプルではありますけど、一番純粋な夢です。
それで、その時にチームメイトやOB、保護者の方々とかラクロス部に関わる全ての人が喜んでいたらいいな、と思います。

 あと、俺は真剣勝負っていうものがすごく好きなんです。
数少ないそういう機会において、自分の全てをかけて対戦相手に挑んで、俺自身が勝負を決めたいという気持ちがあります。
自分の活躍でチームを勝たせたいというか。

 俺が学生日本一になりたいというのには、内発的な理由と外発的な理由があるんだと思うんです。
内発的な理由は、沢山の観客がいる中で4年間かけてきたものを全て出し切って最後に勝ちたい、というもの。
これは単純な欲望です。
外発的な理由は、周りの人へ恩返ししたい、というもの。
4年間も部にいると沢山の先輩・後輩ができるし、どれだけOBや保護者の方々が自分たちに情熱を傾けてくださっているかも分かるようになります。
今年なんて、俺は親から多大な援助を受けて部活に没頭出来ているわけだし、そういうことを考えると、一番良い形で恩に報いるには勝たなきゃいけないですよね。

 スポーツっていうのは全ての過程が結果を出すことに向かっているべきだと思っています。
だから、結果が悪いとそれまでの行動を否定されることにもなるわけで。
きっと、他の大学のラクロス部のやつらも勝ちたいと思って頑張っているはずです。
でも、実際に勝ち残るチームは一つだけ、最後に差を証明出来るのは結果だけなんです。

 スポーツをすること自体には正直全く意味はなくて、決められたルールの中で勝利を目指すことに価値がある、それがスポーツ。
そしてその最終的な勝利に至る道も、詰まるところ小さな勝利の集合だと思うんです。上手くパス出来たとか、そういうワンプレーごとの勝ちの集合ですよね。




(2012年8月14日/新検見川での夏合宿にて)

他人に対して責任を持つ
最終的な勝利の喜びって他の部員にどれだけ責任を持てたかに応じると思っています。
俺だったら一緒にシュートを練習していたやつが試合で点を決めると、それだけで嬉しい。
逆にもし、チームの中で俺だけがユースに入って、自分で活躍して勝ったとしても多分そこそこ嬉しいくらい。

でも、ずっと一緒に練習してきている東大というチームで戦うことは別次元の話。
一緒に練習をした仲間に対して俺は責任を持っているから、そいつがシュートを決めたら俺もすごく嬉しいし、逆にミスすると「あんなに練習したのになんでだよ」って俺も悔しく思うわけです。
喜びは他人に対してどれだけ責任を持てたかということによって増幅するし、そういう人が多いチームは強いチームだと感じます。
チームメイトのことをどこまで自分ごとと思えるか、切り離さずに考えられるか、そういうところを大事にしたい。

俺は練習中常に「もっと指摘しろ、もっと他人に対して責任を持て」ということを繰り返し言っています。
「あいつはこういうやつだから、言っても無駄」とは絶対に思わない。
自分が思ったことは必ず口にしています。

俺はゴーリーというかなり偏ったポジションだから、他のポジションの知識は少ないし、みんなが感じる何がどう難しいか、とか分からないことも沢山あります。
でも、「もっとこういうシュート打った方がいい」とか、「左手使えなきゃだめだ」とか、思ったことはとりあえず言います。
自分が責任を持っている自覚がある人間が多いということは、「絶対負けたくない」という気持ちが大きいということでもあるから。
それに、他人に責任を負うというのは、チーム内において一対一の関係が多くできているということ。
もちろん、一人一人が勝つためにチームにコミットすることも重要ですけど、同時に個人間の関係を大切にしているチームって良いと思います。そうなりたいです。



夢に”徹”する
人って本当にやりたいことしか頑張れないと思います。
だから、自分の原動力となる夢を探して、それを大事にしてほしい。
個人個人が「これを成し遂げたい」とか「こういうプレーで活躍したい」、「こういう場面で自分を表現したい」とかいう夢を常に強く持っているのが理想です。

同時に、さっきの個人間のつながりの話とも繋がってくるんですけど、他の人が徹しようとしている夢を尊重してほしい。
一緒にプレーをする上で必要な信頼関係を築くためには、他人がどんな夢を持っているのかを知ることが不可欠です。
でもそれは他人の夢を鵜呑みにするというわけではなくて、もしも自分と相容れないものだったらぶつけ合うとか、そういう覚悟を持った上で他人の夢を知ってほしいです。
仲間の夢が大したことないと感じたら、「もっと大きな夢を持てよ」、と鼓舞できたらいい。
たとえ最後まで相容れなかったとしても、「違う」ということを認識するのが重要だと信じています。
人の意見を潰してまで上手くなるなんて考えられないですし。
恥ずかしがることなく、誇りを持って自分の夢を語り、また、他人の夢にも耳を傾けることで、いつしか仲間の夢も自分の夢だと言うことが出来たらすごい事ですよね。



行動に”徹”する
 人間は本当にやりたいことじゃないと、色んな辛いことを乗り越えて、継続することはできません。
だから、常に自分のやりたいこと、夢はなんなのかと心に置きながら行動する、っていうことが大事だと思うんです。
それが、行動において”つらぬきとおす”ということ。
逆に言えば、どれだけ夢を持っていても行動に移さなければ意味がない。

あとは、行動に徹しているというあり方を互いに賞賛して欲しい。
それが部の文化になってほしい。
一人一人が毎日筋トレするのはもちろん、それを他人にも求めていかないとだめですよね。
自分ひとりの努力では優勝出来ないわけだから。

練習中や普段の生活のあらゆる場面で求めていく、そういう意味でも行動に徹してほしい。



実現に至る
夢を持って、行動に徹するというのは理想的だけど、やはりスポーツの世界では結果がとても重要です。
夢に向かって努力をしていると、自己満足で終わってしまうことがしばしばありますが、その夢が実現出来るかどうか分からないのでは全く意味がない。

「夢」という言葉をずっと使っていると、どこかふわふわとして地に足の着かない感じがするかもしれないけれど、「夢を持って、それに向かって頑張ったからいいや」というのは許されません。
だからこそ、もっと人間臭く、泥臭く渇望して、なんとしても実現させるという気迫を持って、夢に、行動に徹してほしい。
それが夢の実現へ繋がる道です。

たとえば、俺は学生日本一になりたいという思いから毎日シュートを受けて、自分としては日々最大限の努力をしているつもりであっても、常に何か物足りない感じを覚えています。
この物足りなさは、例えば、あのチームに絶対に勝つためには俺はこのくらい上手くなってなきゃいけないとか、そのためにはあとどれだけ努力しなきゃいけない、とか、そういうリアルな感覚から生じるものでしょう。
だから、他の部員にももっと生々しく、「あいつには絶対負けたくない」だとか、「こういう場面では俺が活躍したい」とか思ってほしい。
「夢」というものをより現実的に感じられるくらい自分の中に落とし込んで、何が何でも達成するという力強い欲望を持ってくれたら嬉しいです。



主将とは
 俺は主将として、また単なる一プレーヤーとしても、全てに責任を持ちたいと思っています。
自分が上手くなることだけでなく、他の皆が上手くなるということ、BLUE BULLETSという組織自体が良くなるということにも責任を持ちたい。

他の皆が上手くなる、という部分ですが、たとえば俺はゴーリーだけどオフェンスに関しても口を出します。
それは、どんなに俺が単体で良いゴーリーでも、オフェンスが悪かったら勝てないから。
的外れなことを言って馬鹿にされるかもしれないけど、口を出すことでちょっとでも良くなる可能性があるなら俺は発言していきます。
俺がちょっと恥ずかしい思いをして済むならそれでいい。

 でも、他の皆のことばかり考えていると、自分が上手くなるということを忘れがちになるのでそこは絶対忘れないようにしたいと思っています。
一般的に言えば主将は普通の部員よりも自分自身に割ける時間は少ないと思うけど、そんなのは知ったこっちゃない訳です。
要は各個人がどれだけ上手くなれるかが勝敗を決めていて、主将も例外ではない。
だから主将であることを言い訳にしたくないです。
チームを勝たせるということと、自分が活躍するということの両方をやりたい。それも俺の夢です。

やっぱりラクロッサーである以上、個人としても活躍しないと面白くないですし。



主将像
主将には色々あるでしょう。
それは、強大なリーダーであったり、象徴であったり。
でも今年の場合はリーダーとしてチームを導いていく存在にはしたくない。
俺の考える「徹」っていうチームのあり方を最大限に体現するロールモデルのような存在が、主将である俺なんです。

主将というのは一番精力的に理想を描いて、それを皆に押し付ける人だと信じています。
俺のやっていることは要は「言い出しっぺ」。
最初に言ったからには最初にやる。
俺は皆より一段高いところにいるわけじゃなくて、皆同じフラットなところにいて、たまたま俺が最初に「これをやりたい」って大声で言っただけ。
だから、他の皆もそれより大きな声で主張すればいいし、色んなところで色んなことを言えばいい。
でも申し訳ないけど、俺は一番大きな声で叫び続けます。
それはチームを一つの方向に導くためではない。
部全体のエネルギーを増やすため。
部全体のエネルギーが高ければ自ずと道は決まるはずですし。

 何度も言っていますが、「自分はこれをしたい」と言って行動するときの方がエネルギーは高いですから、ただ引っ張られているだけじゃなくて、皆もどんどん主張すればいい。
そうやって全体のエネルギーを上げていってほしい。
他人に引っ張られたり、上からの命令で動いたりっていうのは組織として最大限のパフォーマンスをすることにはつながらないでしょう。

 しかし、リーダーシップやフォロワーシップは全く必要ない、ってことではないです。
物事を進めるには核となる人が必要ですから。
たとえば、ライドを作る時には、「こういう方針でいこう」と言って中心となる人は必ずいますよね。
その人は誰よりも責任を持って考えるはずです。
その誰よりもライドについて考えている人のことを尊重しているからこそ、皆その人に従うんです。
別に「上司だから」とか「偉いから」とかいう理由じゃなくて。
人はより強い責任感とより高いエネルギーを持っている人のことを信頼します。

そういう信頼関係の上に今年のBLUE BULLETSをつくりたいです。

Editted by Misa Irie
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