東京大学運動会ラクロス部男子第27期MF / 室井啓介、都外川識志

チームの一員として
 ラクロス部に入ったきっかけは、入学して何か新しいことに挑戦したいと思っていたときに、ラクロスっていう新しいスポーツと、 「東大から日本へ貫く感動を巻き起こす集団でありたい」という東大ラクロス部の理念に魅かれたのがきっかけでした。 ラクロス部は先輩との距離も近くて、皆楽しそうで。それで、自分がその中でプレーしているのが想像できたというか、きっとやったら楽しそうだな、と感じました。 いままでも何かを選択するとき、自分の直感を信じてきたから、そのときも「楽しそう」っていう本能のままに、ラクロス部に入部することを決めました。
 俺はサマー(※1)が終わった後のシーズンの1番濃い時期をBチームで過ごして、隣でAチームの上級生が練習しているのも間近で見ていたので、1年生のときから、 1年生チームというよりチーム全体への帰属感の方が大きかったように思います。でも、入部してから初めて「自分は東大ラクロス部の一員だ」と感じたのは、 1年の冬の新人戦(通称:ウィンター)のときでした。
俺は1年チームのキャプテンを務めたんですけど、ウィンターは、フレッシュマンコーチが俺らを見てくれる最後の大会だったこともあって、 1年間の集大成として優勝しよう、サマー3位の借りを返そうと意気込んで臨んだはずだったのに、ああいうすごく不甲斐ない結果(※2)を残してしまった。 試合後に、27期全員で応援しにきてくれた先輩たちの前に並んでキャプテンの僕が挨拶をしたんですが、その場の空気が本当に重々しくて、 硬直した沈黙に耐えられなかったのをいまでも覚えています。1年生ながらに、これが東大の看板を背負う重みなんだと、そのとき初めて実感しました。 そして、学年が上がれば、この重みはもっと増すんだろうな、とも。
(※1)2011年、夏の新人戦。東大は準決勝で早稲田に破れ、3位という結果に終わった。
(※2)全体を通して流れがつかめず苦戦し、予選リーグ敗退となった。





成長の一年
 だけどいま、自分は2年生としてAチームにいて、本当に自由にやらせてもらっているな、と感じています。 良いことかどうかはわからないんですけど、「俺らのせいで負けて、4年生引退するかも」っていうような息詰まった感覚はあまりないです。 去年とは違って試合の結果に直接影響する位置にいて,でも本当にのびのびやらせてもらっています。 例えばMFセットで話すときも、自分の意見を言い易い雰囲気があるし、俺が言ったことを先輩やコーチは尊重してくれます。 あと、今年のチームには他にも色々な役職があって、それぞれにチームの運営とか戦術を担う役割を与えられていて、 幹部任せじゃなく自分達でやろうっていう意識が皆の中にあると思います。 俺は今、ライドチームに所属しているので、山さん(※3)達とライドについて考えているんですけど、先輩後輩関係なく、同じ土俵で、 勝つ為に自分達で自由にラクロスを作り上げている、というような感覚がありますね。
 俺は、この1年は成長する年だと思ってやってきました。 シーズン当初、牧野さん(※4)に、「2年は自由にやればいい。自分がうまくなることだけを考えろ。それが回り回ってチームの為になる。」と言われて、 この言葉が、今年の自分の大きな指針になっていました。でもシーズンが終わりに近づいて、それだけでいいのかなって思うところも出てきて、 もっとチーム全体のことを意識して動かないといけないな、と考えるようにもなりました。もちろん、まだまだ自分が成長したいっていう気持ちも強いので、そこはまだ複雑ですけれど。 だけどいざ自分がチーム全体のことを考えなきゃならなくなったときに、急に切り替えてチームのこと考えようっていうのは難しいと思うんです。 自分のできる部分から周りに働きかけていかなきゃな、と。ライドに関してはもちろん、同期に対しても。同期のことは好きだし、気の置けない存在ではあるんですけど、 今は同期の中でもチームが分かれていて、面と向かって同期と話す機会が少なくなっていると思います。 だから、もっと自分からも発信しないといけないし、同期にはAチームとかBチームとか関係なく、もっとがつがつ言ってきてほしい。 都外川だって、もっと同期とも話したらいいと思う。特に同期は4年間を共にするわけだし、お互いにもっと本音をぶつけ合える関係を作っていきたいと思います。
(※3)2012年ヘッドコーチを務める23期山下尚志。
(※4)24期牧野賢。



                     
         

プライド
 俺は、何をすればラクロスが上手くなるのかがわかるようになるまで、すごく時間がかかった方なんだと思います。 1年の途中からBチームでプレーするようになって、先輩達に勝ちたかったし、試合でも活躍したかったんですけど、何をやったら勝てるのかわからなかったので、 正直言うとちゃんと上手くなる練習をできていなかったんだと思います。ウィンター前に「ラクロスではなにはともあれシュートが大事」っていうことにやっと気づいて、 ひたすらシュートの練習をしていたくらいですかね。
 なので、今年のフェスタ(※5)で浦山さんに誘われてOF幹部になったものの、1年のときにラクロスについてあまり考えていなかったので、最初は何をしたら良いか、全くわからなかった。 だからとりあえず映像をたくさん見ることから始めました。これは自分にとっては得るものが大きかったと思うし、成長の契機であったとは思いますけど、 フェスタに向けてチームの役に立ったかと言うとまったくで、幹部としての存在価値は無かった。ただ、幹部として役に立っていない感はヒシヒシと感じていたので、 フェスタの時期はとにかくテンション上げてやるしかない、という所だけはこだわったつもりです。
 フェスタではいいOFのイメージを持てるようになって、「こういうOFがやりたい」っていう気持ちが芽生えたんですが、 同時に「上手く攻めないと楽しくない」っていう気持ちも出てきました。だから自分で点を取りにいこうとしなくなっていて、そしたら春合宿のときにBチームに落とされました。 あれは、今思い出してもムっとします。他の選手と大して実力差があったわけでもないのにって。 室井だったら、そういう時はコーチになんで落とされたかを聞いて、色々考えるんだろうなと思いますけど、俺は「聞きにいったら負けだ」と思って、絶対に聞きにいきませんでした。 プライド高いんだと思います。だからその時も「結果出して、コーチに使わざるを得ないと思わせるような選手になるしかない」っていうことしか考えてなくて、 でもそのお陰で、がむしゃらにやるようになりました。自分のやっていることが誰かに認められたかどうかっていうのが、俺の中ではすごく大事です。
(※5) フェスタとは毎年3月に行われるつま恋スプリングカップのこと。今年はチーム全体を2等分して、浦山主将率いる浦山チームと出戸選手率いる出戸チームで臨んだ。


勝つしかない
 今年のリーグ戦開幕戦を、合宿後に全員で見に行ったんですけど、見ていてかなりショックを受けました。両チームともMFが東大より断然上手いし、LGもそもそも走り方から違う。 早慶のラクロスは見ていてかっこいいし、期待感のあるプレーをする選手が多いと思います。東大とやってる競技が全然違うように見えて、その時は絶望に近いものを感じました。
 今年の東大のラクロスには、幹部任せじゃなく、全員でラクロスを作ろうっていうチーム方針があります。 だから室井が言っているように俺ら2年生も自由にやらせてもらっているわけなんですけど、それは上が頼りないことの裏返しだと思います。 たとえば、去年の牧野さんみたいに「俺を中心にプレーを回せ!」っていう人はいない。もちろん、4年生一人ひとりは頑張っているとは思うんですけど、 その頑張りが全体にまで連鎖していない。それもあと少しで引退なのに、って思うと腹が立つこともあります。4年生ならもっとエネルギーあっていいんじゃないか、と思ったりもします。
 でも、勝つ為に足りない分は俺ら下級生が頑張るしかないんですよね。4年生任せじゃなく、全員で勝つしかない。 俺は、開幕戦の時とは印象が変わっていて、FINAL4で慶應に絶対に勝てないとは全然思っていないです。東大がいままでやってきたことをちゃんと出せれば、勝てると思っています。 俺は概念的なことはあまり好きじゃないし、「何を一番大事にしてラクロスしてますか?」と聞かれても、 今は「ボールのもらい際に加速すること」を一番大事にしているとしか言えないし、正直目の前のラクロスに向き合うことで精一杯です。勝つためにうまくなる。それだけです。




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