「自分のために」
中学・高校の6年間、打ち込んだのはサッカーだった。
運動神経は決してよくはない、平凡な一選手。
朝練では誰よりも早く。
練習では一番元気よく。
それだけが取り柄だった。
しかし、いつも自分のいる場所はピッチの上ではなかった。
1年生の時も、2年生の時も、3年生の時も誰よりもチームを応援していた。
声を枯らして応援する事が、チームのためになると思ってきた。
そして引退の日、後輩からもらった色紙に書かれていた言葉は、「縁の下の力持ち」。
嬉しかった。
それでいいと思っていた。
それが自分。
同期にも、『お前が応援してくれたからここまで来れた。』
と言われた。
素直に嬉しかった。
チームのために、自分は犠牲になってもいい。
そこに自分の居場所とやりがいを見つけていた。
大学。
上を目指したい、そんな理由でラクロス部に入った。
1年、2年、3年・・・
ここでも自分の居場所はスタンド。
応援団長もしていた。
チームのために。
活躍する先輩・同期・後輩の背中を見つめ、必死で声を出した。
また、ここでも声を枯らしていた。
勝てば嬉しくて泣いた。
負ければ悔しくて泣いた。
思いっきり応援した。
チームが日本一になるために。
それが自分の役割だと信じて。
2005年12月20日。
同期と考えていた事、思いをぶつけ合った。
しかし、そこで気が付いたのは自分と同期の間での大きなズレ。
『金井はすごいよ。あそこまで応援できない。あそこまで泣けない。スタンドで応援する事が悔しくてそれどころじゃなかった。』
いつから自分はあきらめてしまっていたんだろう。
「縁の下の力持ち」でいい、これは「チームのため」なんだ。
いつからそうやって自分を納得させてきたんだろう。
縁の下の力持ちになるために、ここにいるんじゃない。
自分のために。
自分が輝くために。
自分がチームを勝たせる。
ようやく気が付いて、残されていた時間は1年間。
もう遅すぎるのか、
まだまだ時間があるのか、よくわからない。
ただやるしかない。
自分がどこまでやれるか。
自分が何を築けるか。
やれるだけやってきた。
あと少し。
チームのために、だけではなく。
自分のために。
それがチームのためになる事を信じて。
19期 #42 金井 怜