「期待」

 

 

足は遅いし球も取れない。根っからの運動音痴。

夏にはラインドリルだけで吐いた日もある。

もうやめよう、新人戦が終わったら、このシーズンが終わったら。

 

ラクロスをはじめて一年目が終わろうとしているとき、わからなくなった。

俺の描いた大学生活はこんなもんじゃない。

けれど何が自分がこの部から去ることを先へ先へと伸ばさせているんだろう?

真剣に、やってみないことにはわからない。

 

そうして決めた。

もう一年だけ、やれることやってからでも遅くない。

下手なりに、フィジカル作りからはじめた。

週三回の筋トレと、毎日のフットワーク。

1on1も数をこなした。

 

辛抱強く見守ってくれた同期と、ほんの少しの先輩の期待。

それに応えたかったんだ、と気がついた。

 

遅かったのかもしれない。

同期の多くがAチームでプレーするようになった三年の夏。

後輩にも抜かれだしたその頃に、転機が訪れた。

 

ゴーリーへのコンバート。

消極的理由は、ロングとしての限界。

けれどなにより、以前見た元日本代表吉田威史さんの記事がきっかけだった。

「止められないシュートはない」

自分が止めれば点が入らない、そんな単純な想いが今もある。

すべてを帳消しにするセーブをする、そんな野心に気付いたとき

行動を起こす原動力は周囲の期待ではなく、

自分に期待したいという、内側から湧いて出たものだった。

 

日本一のチームの、日本一のゴーリーに。

そのイメージは一気にふくれあがり、時間の流れも速くなった。

俺ならやれる。                          

 

2006 #29 末藤尚希