あの日の「ありがとう」 #44萬野有生

大学に入ってラクロスに出会ってはや4年、あと数日で引退をかけた試合に臨むことになる。

思えばこの4年間、毎年どこかで負けて引退する先輩の姿を見てきた。
2005年12月の江戸陸。
寒空の下全日本選手権決勝の後の4年生の先輩の姿はとてもかっこよく、負けて悔しいながらも少し誇らしい気持ちになったりもした。
「日本一の応援をありがとう」って先輩に言われた。

2006年11月の大井。
僕は観客席でビデオを撮っていて、負けたという現実感が襲ってきたのは泣き崩れる4年生を見てからだった。
そんな中で響き渡ったヘッドコーチの「ありがとうございました」というたった一言の挨拶。

2007年11月の大井。今度は自分もベンチにいた。
だけど試合に出ることはできずただただ悔しくて泣いた。
自分たちは引退なのに笑いながら「よく頑張ったな、ありがとう」って声をかけてくれた4年生の姿に一層泣いた。

そして2008年11月3日。自分がピッチに立っている。
その姿は後輩たちの目にはどんな風に映っているんだろうか。

決して短くはなかった4年間、今まで泣いて怒って喧嘩もして、そして一緒に笑い合った仲間たちと共に勝利を目指す。
勝負というのは絶対に勝つかはわからない、自分にできるのは自分の持てるすべてを出して後は祈ること。
でも祈る資格を得るのはこれまでやれることを全部やった人間。
これは簡単なようで難しい。
でも、チーム全員が祈れるようなチームなら勝てるんだろう。

必ず今年のシーズンに終わりは来る。
その終わり方がどうであれ、これまで先輩たちが自分たちに見せてくれたような姿を後輩たちに見せたい。
どんなに泥臭くたって、スマートじゃなくたって、下手だったって、自分のプレーが誰かの心を少し揺り動かすような。
そんなプレーが出来たらいい。
そして勝って、先輩に、後輩に、同期に、心から「ありがとう」を言いたい。

あと3日。今、4年間で一番わくわくしている。

2008.10.31.


DF#44 萬野 有生