織力の東大。 近年のBLUE BULLETSはそのように評されることも多い。

もちろん、毎年関東ベスト10に名前を連ね、
U-21、U-23をはじめ、日本代表クラスの選手も幾人も輩出しており、
決して個々のプレーヤーの力が劣っているわけではない。
それでもやはり、”組織力の東大”なのだ。

OB・OGも巻き込んだ形で、継続してチームを運営していく力。
多数の優秀なコーチ・スタッフ・マネージャーに支えられる、チームをマネージメントしていく力。
そこには、いくつもの要素があるのだろう。

今回は、ラクロスのプレーにおける組織力=チーム戦略、戦術にフォーカスをあてる。

BLUE BULLETS 2006の全ての戦術を統括するヘッドコーチ、林融(Hayashi Tohru)。
その情熱に迫る。



融。去年、清水ヘッドコーチの元でAチームコーチを務め、
関東学生リーグ優勝、全日本選手権準優勝の原動力となる。

「俺はダメだったんです。選手として。
だから、自分よりもいい経験をして欲しい。ただそれだけです。
だから、時にはつらいことも言わないといけないこともある。耳が痛いことを言わないといけないこともある。
それは、俺が一番良くわかっているから。」

U-21、R指定。1人のラクロスプレーヤーとして、決して誇れない経歴ではない。
でも、「ダメだった」のだ。BLUE BULLETSの選手として。

最後の試合。
得失点差によるFINAL4出場の為に、15点差での勝利が求められた試合。
12対4の大差での勝利にも関わらず、 試合終了のホイッスルと同時に誰もがその場で崩れ落ちた試合。

その一ヶ月後、最後の紅白戦の翌日、彼は掲示板にこう記した。

「昨日試合してて思ったけど
俺にはもうラクロスできないな
する理由がなくなってしまった
ボールを前に転がしても拾いにいく理由がなくなってしまったな
でも、現役はやっぱり一生懸命やってて
いいなー、ずるいなー、って思いました

がんばれ、幸せ者たちよ!」

それでも、再び戦う事に決めた。
ボールを追いかけるのではなく。
幸せ者たちを導くために。




ッドコーチのしている事は、きわめてシンプルだと言う。

「まず理念がある。それに基づく目標がある。
それを達成するための、設計図みたいなのを描いてあげる事だと思います。
最終的な目標から逆算して、タームごと、試合ごとに区切る。
今日の練習、明日の練習では何をやればいいのかを提示してあげる。
言ってしまえば、すごく事務的なことです。」

「ただし、それを妥協せずに要求すること、絶え間なく要求し続けること。
僕は、彼らが日本一に対して持っている思いが本物であると信じていて、
そして、だからこそ、その思いの一部を託された僕は一時的な快適さを許す事は出来ないんです。」



とつの信念がその情熱を支えている。
「このやり方で、必ず勝てる」

その根拠の1つは、コーチという「ポジション」についてのノウハウが十分蓄積されつつあり、成熟期にあること。
たとえば「こんなオフェンスをやりたい」と考えたときに、
どうやったらそれを成立させ浸透させるかという事に対して、即座に明確な答えがある。
たとえばチームが良くない状態の時に、問題点を分析し、具体的な解決策を提示できる。

「'04、'05のヘッドコーチを務めた清水さんをはじめ、
歴代のコーチの方々の積み重ねがあって、僕が今こうしてやれているんだなって。」

もう1つは、「ラクロスとはこういうスポーツである」というノウハウが明らかに高まっていること。
海外遠征、外国人コーチの招聘も含め、世界のラクロスに目を向けた結果として。

「今年のBLUE BULLETSのBチームのプレーヤーが当たり前のようにやっていることを、
僕らは現役のときに知らなかった。少なくとも、浸透していなかった。ほんのつい2年前に。」

もちろん相手があっての勝負事である。
絶対は無い。時には運もある。
「これでダメだったらしょうが無い、とは決して言いたくない。
でも、それだけの自信はあるし、結果も付いてきてくれている。
後は妥協なく、ひたすら継続する。」




を日本一に突き動かすもの。

「たとえば、絶妙のタイミングでタイムアウトを取れたときは確かに嬉しい。
でも、そのタイムアウトをとって、またフィールドに戻っていく選手の目を見たときに、
あ、いつもと違う目をしているなって思えるときが一番嬉しいな。」

「人間的なところですかね。
ラクロスって結局根本的にチームスポーツなんです。
自分で点を取ること、自分の事で悩むことよりもずっと面白いことが、この集団には山ほどある。
個々人が好き勝手にやっていて、それで優勝しても、多分大きな感動は生み出せない。

きっと、そこが東大ラクロス部BULEBULLETSの理念なんだと思う。

そういう意味では、今の東大の戦術、ラクロス感って言うのが、
理念とすごくマッチしているんだと思います。」


番心がけていることは何か?という問いに、こう答えた。

「早く明日の練習がしたいな、と思ってもらうこと。当たり前のことかも知れないですけど。
やっぱり、辛いはずなんです。
ひたすら自分を追い込まなきゃいけない。勉強にも追われる。
お金も無いから、バイトもしなきゃならない。
でも、ラクロスって最高に楽しい、このチームでやりたい、
このチームを信頼して全日で優勝したいって一番思える時間は、
やっぱりラクロスをしているときで、その時間をすごく大事にしてあげたいと思う。」

自分は、完璧なコーチではないから。
全てを理解していて、圧倒的な信頼があって、威厳があって。
プレーヤーがもろ手を挙げて全てを託すことが出来るコーチではないから。

だからこそ、せめて一番考えるのだと。

「12月17日に、最高の勝利を得る為に。
今日、明日、1週間後にチームは何をしなければならないのかを、
常に誰よりも考え抜いた上で、選手の前にいたいと思います。
彼らが日本で一番練習するのだから、僕は日本で一番チームの事を考える。」

ある集団が、何かの目標に向かって進むときに、
一番情熱を持つものが、その集団の長である必要は全く無いのだろう。

「誰が日本一に対して一番情熱を持っていてもいいと思う。
一年生だって、OBだっていい。
自分が一番日本一になりたくて、
そのための努力をしているって思ってる人間は、
試合に出る選手だけなんて決まりは無いです。
そういう人間が100人集まるかどうか。
そういう集団になれるかどうか。

僕は、日本一に対して一番情熱を注いでいたい。」


Belief, a story about bluebullets
Written by WEB班 編集長
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