2013年度G leader 田村 涼




東大Gとしての誇り
 東大は代々レベルの高いGを輩出しています。過去に何人も関東ユースやU22(*1)になっていますよね。だから、僕も上手くならないといけない、というプレッシャーがすごくありました。
 先輩が上手いというのは、技術を教えてもらったり見て盗んだりする機会が多い半面、試合に出られないということでもあります。3、4年生になるまではAチームの試合になかなか絡めないんです。だから、2年生のときは苦しかった。もちろん自分の技術不足もありましたが、チームにいるGの数が多くて練習効率が悪いという理由でBチームに落とされたりとかもあって。
 去年も、「2本目だから少しはリーグ戦に出られるだろう」と思ったんですが、結局初戦の10分しか出場できなくて、本当に悔しかったです。FINAL4(*2)後に山さん(*3)に呼ばれて「お前は出せるGだったよ」と言われたのが少し救いではあったんですが、やっぱり試合に出ていないという事実は変わらないですから。
 今年からようやくリーグ戦に出ることができて、緊張感もありますが、すごく楽しいです。自分のセーブやクリア時のパスでスタンドが沸くのが嬉しい。また、去年までベンチでくすぶっていた時期があるからこそ、試合に出ていない他のGに「俺が出てれば」と思わせるようなプレーは絶対に見せられません。しっかり活躍して、東大Gの歴史に名を残したいと思っています。引退してから5、6年経っても後輩の間で語り継がれるような選手になりたいですね。ベストGも、他の選手に取られるくらいなら自分が取ってやる、と思っています。

(*1:22歳以下日本代表、以下U22。)
(*2:2012年度関東学生リーグFINAL4vs慶應義塾大学。8-11で敗北。)
(*3:2012年度ヘッドコーチ山下尚志)



経験と自信
 シーズン当初から、経験と自信がないのがとても不安でした。大事な試合において、チームを引っ張ったことがなかったんです。さっきも言いましたが、去年は10分しかリーグ戦に出ていないので。Gというのはフィールドにおいて、主将や幹部など関係なく、最もチームを率いていくべき存在だと思うんですが、自分は本当に経験が少なかったので、「やっていけるんだろうか」という不安で頭がいっぱいでした。
 日本一という目標を掲げたからには、日本一にふさわしいGにならなくてはいけないと思っても、「本当になれるのか」と考えてしまったりして。ただ、ちょうどその頃U22の選考があったんです。だから、とりあえずそこに焦点を合わせて頑張ろうと思いました。もっとチーム全体のことについて考えなくてはいけなかったのかもしれませんが、僕が最終的にチームを引っ張っていく上で必要なのは経験と自信だという確証があったので、その二つを手に入れることに尽力しようと決めました。U22の選考に全力で挑んで、それでも駄目だったらまた考えようと思ったんです。それからはかなり頑張って、幸い選考に通ることができました。最終的には補欠になってしまったんですが、それでも確かな自信となりましたね。
 U22の活動を通じて、FALCONSと試合をして勝ったり、国際親善試合や強豪クラブチームとの試合にも参加したりと、去年のリーグ戦における経験の少なさを補える経験ができたと思っています。経験と自信のなさから来る不安が、ここで解消されました。
 U22として見られるようになった今、妥協はできないし、下手くそな姿は見せられないな、と強く感じます。僕がJAPANメット(*4)を付けるのは、自戒の念というか、自分自身にプレッシャーをかけるためなんです。「あいつはU22だ」という目で見られることで、自分を追い込むというか。甘えることなく日々行動するための、正の原動力のようなものになっています。

(*4:U22の選手が着用する白と水色を基調としたヘルメット。)



狂奔
 「狂奔」という言葉を聞くと、がむしゃらに練習をするという様子を想像する人が多いと思います。でも、僕は誰にも負けないくらい考え抜いた上で行動に移すことこそが「狂奔」だと考えました。チームが勝つためにも、自分が上手くなるためにも、自分のGというポジションについて考えに考え抜いて、日々どういう練習をしたら効率がいいか、とか今の自分に足りないものは何か、と常に問い続けることが大事だと思います。やっぱり、なにも考えないでただ与えられた練習を単調に繰り返すだけでは意味がないですし、それは「狂奔」とは呼べません。行動する前の「考える」というところもしっかり狂奔する必要があります。その上で、誰にも負けないぐらい日々練習しているつもりです。




貪欲に吸収する
 色々な人に話を聞けば、その分考えの幅も広がるし、様々なことを吸収できると思います。僕は下級生の頃から、とにかく多くの人の話を聞くようにしているんです。東大の先輩方はもちろん、ユース(*5)の練習にコーチとして来てくださるクラブチームの方とも機会を見つけて話をしてきました。
 沢山の人の話を聞いた上で、「これはいいな」と思ったことはどんどん盗んでいます。「こういうことを意識してるよ」と教えてもらったら、真似してみて、自分に合っていると感じたらそのまま取り入れたり、自分なりのアレンジを加えてみたりします。他にもYouTubeで外国人のセーブフォームを見て真似をして、先輩に指摘してもらいながら自分に合った形を見つけるということも、よくしていました。いわゆる「いいとこどり」ですね。僕は確固たる芯を持っていれば、外は付け替えてしまってもかまわないという考えなので、他人からの指摘を柔軟に受け入れることができるんだと思います。吸収できることは吸収しようという貪欲さを大事にしています。
 東大生は真面目なのはいいんですが、あまり外の世界に目を向けていないと感じます。せっかくクラブチームとかと合同練を組んでもらっても、話を聞きに行ったりしないんですよね。クラブチームには東大にないプレースタイルを持った人が沢山いて、確実に学べることがあるのに、もったいない。どんどん話しかけて仲良くなって、色々と教えてもらえる関係を築いたらいいと思います。

(*5:田村は2010年度関東ユース選抜の一員)



求める
 Gというポジションは他のポジションのプレーに口を出しづらいと思われがちですが、僕は結構口うるさく指摘します。下級生の頃は、自分もできていないのに人のプレーに意見してもいいものかと考えてしまい、発言をためらっていたこともありました。でも、自分のことは棚に上げてでも、言わなければ何も変わらないな、と思い始めたんです。試合で少しずつ活躍できるようになってある程度自信もついてからは、積極的に発言できるようになりました。
 また、U22での活動を通じて、同年代の高いレベルの学生のプレーに触れられたことで、様々なプレーに対する水準が高くなり、仲間にもっと求めていけるようになりました。日本一になるには、彼らのような選手のシュートを止められなくてはいけないし、彼らが切り替えるよりも速くパスを出さなくてはいけない。また、彼らに負けないようにチームをしっかり統率できなくてはならない。そういったことに気付かされました。「こんな安いシュートじゃ、早慶のG相手に通用しないぞ」とか「あいつらはもっと切り替え早いんだから、負けるぞ」とか、どんどん言うようにしています。
 あと、僕はDF陣だけでなく、OF陣にも指摘します。実は、彼らの小さなミスから生まれるターンオーバーがDF機会を増やし、最終的には失点に繋がっているんです。たとえ実際にDFをしたり球を受けたりしなくても、自分のミスが失点の原因となるということを自覚してほしい。もちろんその逆もまた然りで、たったひとつのいいパスがチームに流れを持ってくることもあります。自分のワンプレーがゲームの流れを左右する。チームメイトには常にそういう意識でプレーしてほしいと思っています。



新歓代表として
 実は、主将に立候補するかどうか、すごく悩んでいました。主将決めと新歓代表決めの時期がちょうど被っていたんですが、どちらの方がチームにより貢献できるのかとかなり考えたんです。最終的には、リーグ戦における経験不足に引け目を感じてしまったことと、去年は新歓副代表としてあまり貢献できなかったのが心残りだったということもあり、新歓代表に立候補しました。チームというピラミッドの底を強化する方を選んだんです。ただ、主将から逃げたという風に思われたくなかったので、新歓は絶対に成功させようと決意しました。
 東大の強さは、最初に入れる人材で半分くらい決まっていると思います。早稲田や慶應、東海などの大学にはもともと運動能力が高い選手が多いので、いかにそういった選手らに遜色ない人材を揃えることができるかというのは本当に重要なんです。絶対に失敗できないと思いました。かなりプレッシャーを感じましたよ。
 実際に新歓代表としての活動が始まると、想像以上に大変でした。就任前は、皆の話を聞いてまとめればとりあえずうまくいくかな、と考えていたんですが、全くそんなことはなくて。リーダーは人の話を聞いているだけでは駄目なんですよね。やっぱり自分で決断することが大事なんです。しかも、その決断が原因で失敗してしまったら、自分が矢面に立たなくてはいけないという責任の重さもあります。
 新歓代表としての活動を終えて、改めて100人の組織を1つの方向に向かわせるのはすごく難しいことだと実感しました。同時に、常にチームを引っ張っている主将の大変さを理解することができたと思っています。だから、それを機に僕は主将や幹部の手が回らないところをカバーしようと決めました。一応G長という肩書きはありますが、僕はほぼ平部員のようなものなので、幹部陣の目がなかなか届かないような細かい隙間を埋めようと思ったんです。具体的に言えば下級生のメンタルケアなどですね。練習中に少し様子がおかしいな、と思った後輩と練習後に話をするといった些細なことではありますが。新歓活動を通して、一見全く関係のないところに目が行くようになったのは、自分が成長した証だと思います。






 (20130908 edited by Misa Irie)
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