2013年度主将 金井 健太郎




狂奔  —ある目標のために、夢中になって奔走すること―
 昨年末、副将の舟橋・室井と僕の3人で、チームスピリットについてずっと考えていたんです。本当に色々な案が出ました。“限界突破”とか“壁を破る”とか。でも、どれもしっくりこないな、という感じで。そんな時に、“狂奔”という言葉が急に降ってきたんです。どうして出てきたのか自分でも分からないんですけど、ふと頭に浮かびました。
 自分で言うのは少し恥ずかしいのですが、「今までの人生を振り返って、漢字2文字で表すとすれば」と尋ねられたら、僕は「“狂奔”」と答えるでしょう。僕は、なにか特別才能がある人間ではありません。別に勉強が飛び抜けてできたわけでもないですし、スポーツにおいても、昔はレギュラーなんて全然取れませんでした。自分は色々頑張ったからここまで来ることができた、どちらかといえば努力型の人間なんです。僕以外のBlue Bulletsのメンバーの多くも、おそらくそうでしょう。だからこそ、“狂奔”する以外、僕らには勝てる道はないと考えました。
 “狂奔”というのは、普通の人であれば「まあ、ここでやめるよな」というところでやめないということ。周りが「ここまでやるか」と驚くくらいの努力をすること。この努力の原動力は「勝ちたいという情熱」です。勝ちたいという気持ちが強ければ強いほど、“狂奔”できると思っています。




限られた時間
 なかなか難しいことだとは思いますが、24時間常にラクロスのことを考えるのはすごく大事なことです。たとえば、ただ歩いているときも自分の重心がどちらに傾いているかなどを意識するだけで、コーディネーション能力は変わってきます。他にも、日々の生活においてこだわることのできるポイントは色々あります。ただ、僕らは学生なので全ての時間をラクロスに捧げるということはなかなかできません。4年生であれば、就活があったり、院試があったり。下級生だって授業や試験があります。そんな限られた時間の中で、いかにラクロスについて考えるかがとても重要なんだと思います。
 結局人に与えられている時間は平等なんですよね。だから、頑張った分だけ他人に差をつけることができるし、逆にさぼった分だけ差をつけられてしまう。特にラクロスというスポーツは、大学から始めるスポーツだからスタート地点は皆一緒のはずです。けれど、365日×4年という時間の過ごし方によって最後に到達する場所は全く変わってくる。だからこそ、その時間の過ごし方をよく考えなくてはなりません。



チームメイトのために“狂奔”する
 これは、去年も感じていたことですが、チームメイトのために“狂奔”するというのは本当に重要なことです。ラクロスはチームスポーツなので、自分のミスを仲間がカバーしてくれることもあれば、仲間のミスで負けにつながってしまうこともあります。だから、チームメイトをうまくすることはとても大事なんです。
 ただ、普通は「Aチームに上がりたい」とか「リーグ戦に出たい」とか、自分にのみ焦点をあてて練習をしてしまいがちです。しかし、本当に重要なのはチームが勝てるかどうかなんですよね。
 僕がこのことを痛感したのは、去年の一橋戦(*1)でした。シーズンも中盤に差し掛かっていて、自分はそれなりにうまくなっていたつもりだったんです。でも、試合には負けてしまった。その時、自分だけが頑張っても仕方なくて、チームメイトも一緒に努力して、うまくなって、はじめて「勝てるチーム」になるんだと気付きました。それまでも、浦山さん(*2)から「他人に責任を持て」とずっと言われていたんですが、ようやくその言葉の真意を理解したんです。それからは、自分が伸ばしたいと思うチームメイトを誘って積極的に自主練をするようにしました。
 チームメイトのために自分が“狂奔”するのは、難しいことではありません。真に困難なのは、「チームメイトを“狂奔”させること」。さっきも言いましたが、“狂奔”の原動力は「勝ちたいという情熱」です。人間なので、時に情熱が弱まってしまうこともあります。チームメイトの情熱を強くするよう働きかけるのは、本当に難しい。人によって、置かれている状況も違うし、情熱が弱まっている理由も違います。どうしたら、チームメイトをもっと“狂奔”させられるようになるか、正しい結論は見出せていません。そもそも結論があるのかすらも分からない。ただ一つ確かなことは、勝ちたいと思わない人などいないということ。僕は、主将として責任を持って、チームメイトがより“狂奔”できるよう試行錯誤していきます。

(*1:2012年度関東学生リーグ第3戦vs一橋大学。この試合、東大は7-8で敗北を喫した)
(*2:2012年度主将浦山卓弥)



主将とは
 僕の「主将」に対するイメージはBlue Bulletsそのもの。歴代の主将を見ても、その代を一番如実に表しているのは主将だと思います。チームスピリットを最も体現しているというか。だから、今年“狂奔”というチームスピリットを掲げたからには、僕が一番“狂奔”していないといけない。主将以上に頑張ることのできる人はいない、僕の頑張りがチームの上限を決める、とまで思っています。
 チームの中でも、主将は一番多くのものを背負って立っています。それは、OBの方や家族会の方とお会いする機会が他の部員より圧倒的に多いからだと思います。沢山の人が、東大ラクロス部を、現役部員を支えるために多大な協力をしてくださっています。現役には、その想いに応える義務がある。だからこそ、一層負けるわけにはいきません。


日本一
 今シーズンの目標を「日本一」に設定した時、チームの幹部からかなり多くの批判がありました。現在の日本のラクロス界において、日本一になるというのはFALCONS(*3)に勝つこととほぼ同義なのですが、「そんなことは無理だ」という意見が多くて。でも、僕はその考え方は「面白くない」、と思いました。FALCONSはうまいです。彼らは大学で4年間プレーした上で、さらに練習を積んでいるわけですから。大学生がそれに追いつくのは厳しいんじゃないかという人の考えも、理解できます。でも、それは勝ちを諦める理由にはならない。彼らだって、同じ人間です。神格化するのは、なにか間違っている気がしました。
 僕は「負けたくない」という想いがすごく強い人間です。それは強豪FALCONSが相手でも同じこと。単純ですが、試合に勝ち続ければ、最終的には日本一にたどり着くことができます。だから、「負けたくない」と考える僕が日本一を目標としたのはごく自然なことなんです。
 僕が入部してから、東大は未だ学生日本一すら成し遂げていません。そんな状況なのに、日本一を目指すなんて無謀ともいえるかもしれない。でも、僕は日本一になるためにこの部活に入りました。その時の気持ちは今も変わりません。頂点に立って、そこからの景色を皆で眺めたい。それだけです。

(*3:全日本選手権5連覇中の強豪クラブチーム)




海外志向
 以前FALCONSの方と話した時に思ったのが、皆海外に目を向けているということ。FALCONSは多くの日本代表選手を擁しているので、どうしたら外国人に勝てるかということを常に考えて練習しているんです。「そんなプレー、外国人には通用しない」とか「外国人だったら、こうする」といった発言が頻繁に出てくるのが印象的でした。そんなFALCONSと対等に渡り合うためには、僕らも同じ目線に立たなくてはならないと感じ、今年は海外志向の強いチームとなったんです。
 だから、ウドさん(*4)から「ベルリンオープン(*5)に出ないか」というお話を頂いた時、願ってもないチャンスだと思い、出場を決意しました。海外のラクロススタイルに触れることで、世界観が変わるだろうと考えましたし、一選手としても、外国人相手にどれだけ通用するのかという強い好奇心もありましたね。
 実際、ベルリンオープンで多くのチームとプレーをする中で、様々なラクロススタイルを直に体感することができました。たとえば、技術的には優れていない選手でもとにかく身体が強靭で、グラウンドボールやフィジカルコンタクトの激しさなどで圧倒されることも多々ありました。どちらかといえば、技術にフォーカスしている日本のラクロスとは全く違います。とても新鮮でした。
 また、海外に出て、これまでとは違う環境でプレーしたことで、負けが込んだ前半期の閉塞感を打ち破ることができました。試合中のメンタルについてじっくりと話し合うミーティングの時間も設けることができ、ベンチワークもかなり改善されました。沈んでいたチームの雰囲気を修正できて良かったと感じています。

(*4:今年度ヘッドコーチ鈴木直文)
(*5:毎年ドイツ・ベルリンで開催されている、大規模なラクロストーナメント。ヨーロッパ各国の代表チームやアメリカのクラブチームなどが集う)


前半期を振り返って
 前半期は負けが続いて、本当に苦しかったです。色々と敗因はありましたが、怪我人が多かったのが一番の原因だと思います。主力選手が怪我で抜けてしまったことで、単純な戦力ダウンに加え、日々の練習の質が下がってしまったのが良くなかった。でも、怪我はある種事故のようなもので、誰も責めることができないんですよね。だから、もどかしさというか、行き場のない怒りが生まれてしまって、精神的にとても辛かったです。
 今シーズンのこれまでを振り返ると、きっと歴代Blue Bulletsの中でも相当苦しい過程を歩んできていると思います。戦績は、とても良いと言えるものではありません。でも、結局後世に残るのは、これからの結果です。シーズン前半に勝てなかったことはもちろん問題なのですが、真に重要なのはこれからで、そこは割り切って考えていいと感じています。僕はこのチームが弱いとは思いません。このチームが強いことを証明するためにも、ここから先の試合全て、必ず勝ちたいです。



一橋戦に向けて
 一橋はとても良いチームだと思います。色々なことが徹底されていて、チームが一丸となっている。多くの人が言っていることですが、組織力が本当に強くて、部員一人ひとりが自分のやるべきことを自覚しているのだと思います。でも、東大だって負けていません。ここまで部員全員で狂奔してきました。
 去年のリーグ戦での一橋戦を見返していると、気持ちがすごく盛り上がるんです。一橋が強いからこそ、試合が楽しみで。これは、僕の性格なのかもしれないですが、強い人たちとプレーできるということにわくわくします。自分の力がどれだけのものか、試すことができるんですから。もちろん、緊張はするでしょう。でも、そんな緊張感を味わえることなんて、これから先の人生でなかなかないと思います。自分の4年間の全てをかけて戦うようなことは、きっともうできない。負けてしまえば、僕の4年間が否定されてしまうようで怖いという気持ちもあります。けれど、それ以上にこのチームが一橋より強いことを証明したい。個人としても、多くの観客の前で活躍したいという気持ちが強いです。
 一橋戦はリーグ戦初戦、全日本選手権への第一歩と言っても過言ではありません。日本一への道がここから始まると考えると、一橋戦の意義はとても大きなものです。わくわくしますね。必ず勝ちます。




 (20130822 edited by Misa Irie)
 Copyright BLUE BULLETS . All Rights Reserved.



index vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5 vol.6 vol.7 vol.8 vol.9