2013年度幹部 西山 悠太朗




勝利を背負う
 2年生の時からAチームで試合に出させてもらっていたけど、今とは全然違って、ただただ先輩達にぶら下がっているだけだった。俺が2年生の時は4年生が強くて、4年生がDFしてくれて、4年生が点を取ってくれて、俺は時々ボール持って走ってクリアするだけ。俺はチームっていう集合体にちょろんってぶらさがっているだけだった。だから多分、俺がいなくても勝てたと思う。俺がいたら、もしかしたら勝利に貢献するかもしれないし、チームの足ひっぱるかもしれない。でもそれはチームの外側で起きていることでしかないと思っていたから、すごく気楽だった。
 そんな中で、チームの中心にいる4年生の思いに気づかされたのが、法政戦(※1)だった。今となっては自分で言うのも恥ずかしいけど、法政戦の時、自分はそこそこDFが上手くて、俺ならできると思っていた。
 2年の夏にAチームにDFMFとして上げてもらったけど、当時は先輩やコーチから怒られてばっかりで、例えば、練習中の1on1でスイープに抜かれただけで罰走。そんな風に、周りからの評価は「西山はクソ」から始まって、最初はすごく辛かった。でも少しずつ、ちょっとした成功を認めてもらえて、「リーグ戦で西山使おう」ってコーチに選んでもらえた。明学戦(※2)では、DFとクリアがいいって褒めてもらって、VPにも選んでもらえた。だから、それなりに周囲の信頼は勝ち得たって思っていたし、すごくのびやかにラクロスをやっていた中、あの法政戦を迎えた。
 4Qで2点ビハインドになって、とにかくクリアしてOFに繋げようって状況で、ゴールの横まで自分でボールをもらいに行った。冷静に考えたら、2年の自分が行くよりももっと確実にクリアできる選択肢があったはず。でもその時の俺は調子に乗っていて、「俺に任せろ」って、全部一人で抜こうとした。そしたら、ちょっと走ってスプリットしただけでボール落として、ターンオーバーして、そのまま点決められて3点ビハインド。あの時は「終わった」と思った。その後、先輩達が頑張ってくれて、逆転して勝つことができたけれど、試合後に4年生にすごく怒られた。胸ぐらを掴んで怒鳴られた。そこで初めて、4年生の懸ける思いを感じた。俺は言ってしまえば、それまでどこか本気じゃなかった気がして、勝ち負けは先輩が背負ってるわけだから、俺は自由にやろうって思っていた。それに対して、自分が初めて勝ち負けに絡んだ試合で、「4年生ってこういう気持ちでやってんねや」と、ようやく気付いたのがこの時だった。



 自分が4年になった今は、当時の4年生の気持ちがよく分かる。やっぱり全然違う。俺のプレーがチームの勝敗に直結していると思うし、「他の奴ができないから、西山が頑張ってくれ」っていう期待も感じる。だからこそ、「俺がやらんと」、「俺に勝負させろ」と思う気持ちも強くなった。だけど、もし俺がミスしたら、そりゃ俺はもちろん落ち込むと思うけど、チームとしても落ち込むと思う。「西山さんがミスってる、どうしよう」って不安にさせてしまう。試合ではひとつひとつのプレーがどうこうよりもむしろ、こういったチームの雰囲気の方が重要だと思うし、自分のプレーがチームに与える影響が昔と今では全然違って、その意味で俺は勝利を背負ってる。それはすごくプレッシャーだし、やっぱり逃げ出したいって思うときもある。チームがうまくいかないときとか、全部自分にのしかかってくる、「俺のせいや」って。全部が俺の責任ではないかもしれへんけど、そう思ってしまう。俺がこんなにやってんのに、って周りに腹立つときもある。それでも、やっぱり4年生が一番頑張らないといけない。だから同期にはもっと頑張ってほしい。
 もちろん下級生にも頑張ってほしい。特に、2年生の1回の成功ってすごくチームを盛り上げるもの。その前にミスしていたとしても、1回成功すれば、本人も盛り上がるだろうし、チームもすごく盛り上がる。それはチームにとってすごく大事なことだと思う。けど、4年生は違う。4年はチームのすべての支柱だし、4年のプレーがチームの勢いを左右する。やばくなったら、4年が何がなんでもボール奪ってやらなあかん。そこで下級生に任せたらだめ。「俺がやる」っていう気概を持って、最後の最後まで、チームの勢いを大事にしないといけない。そういう姿勢を全員が持つだけで変わってくると思うし、逆に一人でも雑なプレーを見せたらチームは一気に崩れる。うまい奴はそういうことをもっと考えないといけないと思うし、自分のプレーにも、もっと責任を持たないといけない。
(※1)2011年度リーグ戦vs法政大。厳しい展開を強いられるも11-8で勝利。
(※2)2011年度リーグ戦vd明治学院大。13-2で勝利。



本音でぶつかる
 俺は本当に人とコミュニケーション取るのが苦手。これは逃げなんだけど、面と向かって本音を言うのがすごく苦手。だから、周りの人には「西山はつかみどころがない」ってすごくよく言われるし、押したらそのままへこむという意味で「粘土みたいだね」と言われたこともある。多分、本音を言って人に嫌われるのが嫌なんだと思う。
 だから、特に3年のときは人のミスに寛容だった。例えば、OFはATに任せて、ATがミスったら内心では腹立つけど、でも実際には言わない。試合には出てるけど、傍観者みたいなところがあったんだと思う。ミスのカバーはするけど、ミスに対して真剣に怒りはしなかった。自分もミスしてたからっていうのもあるとは思うけど。でも4年になって、渉さん(※3)に「お前ら本当にわかってんのか。あいつのミスでお前らの引退決まるかもしれないんだぞ」と言われて、はっと気付かされた。例えば2年がパスミスした時、練習中は「お前練習しろよ」って言うだけだったけど、もしそいつが2年生でもリーグ戦に出て、大事なとこでミスして試合に負けたら、やっぱりやるせない。そう思ってからは、他人のミスに対して、厳しく求めるようになった。今も他人に干渉しきれているわけじゃないけど、そういう気持ちはついたかな、と。
 もちろん、厳しい話だけじゃなく、色々な話を同期とも後輩ともするようにしてる。農グラ(※4)で壁打ちする時とか、筋トレする時とか。そういう時間はすごく楽しいし、一人でやるより、頑張ってる誰かと一緒にやった方が俺は頑張れる。
(※3)今季GMを務める、14期安西渉。
(※4)農学部グラウンド




最高のメンタルをつくる
 俺は、メンタルワークがすごく重要やと思ってる。3年からずっと続けているのは、セルフトーク。具体的には、「you can do it.」ってひたすら自分に言い続けること。調子が悪い時は、「お前ならできる」とか、クサい言葉を手に書いて、暗示をかける。俺は調子の波がすごくあって、悪くなると何もできなくなる。だから、調子が悪い時に、いかに良い方向にもっていくかが大事。
 調子が悪くなったときに気持ちをコントロールするには、いくつかの手段があって、一つは「ラクロスをめっちゃさぼること」。これは本当に効くと思う。例えば調子が悪い時って1日中ラクロスのこと考えて、「あー自主練せんと」ってなって、メニュー中も「あー俺がいっぱい入って練習せんと」って意気込んで、でもうまくいかない。失敗が重なるとメンタルってつぶれていくから、そこで思い切って1回ラクロスをやめる。自主練もやめて農グラも行かへんし、メニューも勇んで入らない。そうすると、気持ちがぎゅうぎゅう詰めにならへんから、成功もちょっとずつ増えていく。そうやって成功を積み上げていくと、自信が持てるようになる。
 あともう一つは、反対にラクロスをがむしゃらにやること。今年の五月祭試合の時は、なかなか練習が上手くいかなくて、すごく落ち込むこともあったけど、その時はひたすら練習してた。どちらにも言えるのは、結局、経る過程はいつも「成功を重ねる」こと。やっぱり成功体験を積むことが大事なんじゃないかな、と。



 牧野さん(※5)のSOULは毎試合前に読んでる。根拠のない自信が俺には必要だと思う。アメリカンフットボールで有名な選手が、「勝つこととは、負けを恐れないことだ」と言っていた。スポーツをやっていたら、勝負すべきところで勝負できない時があって、失敗したらどうしようって安寧の道に走ってしまうことがある。でも、そこからは勝利は生まれない。牧野さんと言ってることは同じやけど、「俺に勝負させろ」って思って勝負せんかったら、絶対勝てへん。ひとつひとつの局面で勝ちを積み重ねていく。一回逃げたらそれまでみんなで積み重ねた勝ちがゼロになる。だから、試合では恐怖心を撲滅しないといけない。
 そのために、俺は入念にメンタルを準備している。そうして迎えた試合では、すごく気持ちが澄み渡って、体が軽く感じる。視野が定まって、点の集中が上がる。周りの音もあんま聞こえなくなる。ひとりの世界になる感じで、その感じが俺はすごく好き。そのメンタルを作れたら、今日はもういけると思える。
 リーグ戦はすごく不安だけど、すごく楽しみで、わくわくしてる。全力でぶつかって、勝負して、勝ちたい。点を取りたい。一歩間違えたらリーグ敗退もありうることだし、だからなんとしても今週末、一橋に勝ちたい。結果は、この1年間、何をやってきたかの差やと思うし、俺らは勝てると思う。勝って喜ぶ姿は頭に浮かんでいる。
(※5)24期牧野賢。2011年度幹部。







 (20130824 edited by Ami Usui)
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