26th MF 西嶋 大二朗




殻を破る
 中高の時はずっと剣道をやっていました。練習はきつかったけど辞めずに続けて、少しは打たれ強くなったかな、と思っていたし、ガタイが良いスポーツマンみたいな人はかっこいいと思って、大学でも運動部に入ろうと思ったんです。それで色々探しているなかでラクロス部を見て、絶対にきついことをやっているはずなのに、先輩達がみんな明るかったんです。それまでの運動部のイメージは「黙々とやる」という感じだったので、ラクロス部の明るさがすごく新鮮で、楽しそうでした。それに、単純に先輩がかっこよく見えました。体格良いし、背も高いし、「漢」という感じがして。だから、自分も先輩達みたいになれたらなという思いでラクロス部に入りました。
 朱に交われば赤くなる、と言うように「ラクロス部に入ればこういう風になれんのかな」と、特に深い考えもなしに入部したわけですけど、そう簡単にはいきませんよね。なかでも2年の時は、初夏くらいにAチームにあげてもらって、それからずっとAとBの境目でやっていました。境目は気持ちの良いものではないです。やっぱりリーグ戦に出たいし、出たいから頑張るんですけど、A練に入ると萎縮してしまう。それで一回、当時4年だった上野さん(※1)にすごく怒られたのを覚えています。練習中、スクリメで、俺がボールを拾ってAチームのLGに詰められた時、恐くて、ぱっと見えた上野さんに何も考えずにパスを出してしまったんです。そしたら上野さんの方がDFに詰められていて、ターンオーバーさせてしまった。それで、フライしてベンチにいた時、戻ってきた上野さんに引っ叩かれました、「なにやってんだ」って。先輩とプレーするなかでミスは許されないと思って自主練をひたすらやっていたんですけど、なかなか思い切ってプレーできない状態は続きました。



 厳しい状況のなかで、自分がボールを落としたらやっぱり嫌だし、ここでボール持ちたくないなって思ってしまう。 2年の時、練習試合で慶應にボロ負けした時、当時のヘッドコーチだったミシェルさん(※2)が、「あの状況で、チームで自信をもって自分が勝負を決めるって思ってボールを持てた奴がどれだけいたか」という話をしていて、その時は情けないことに、「俺は絶対無理だわ」って思ってしまったんです。でも4年になって、それじゃだめだと思って臨んだのが、今年のベルリン遠征でした。チームとして、殻を破るという意味で「破」をテーマにして行ったんですけど、海外の選手は体格が良くて、彼らを相手にボールを持つのが恐いなって思う場面が正直あったし、ショートもチェックが上手くて、クリア中に落とされることもありました。そういう状況で、周りの皆があまり調子良くないのを見たら、「4年だし、ちゃんとやらなきゃ」って思いも強くなって、自分より大きい相手にびびることなく、1on1をしっかりかけることができた。何回もぶっとばされたけど、自分からぶつかりにいけた。日本人で体が小さいからって海外の選手に馬鹿にされるのは嫌だ、という気持ちも手伝って、いつもより思いっきりプレーできたし、大事な場面で点を決められて、チームの皆がすごく喜んでくれたのが嬉しかったです。遠征前と劇的な変化があったわけではないけど、自分がボールを持って勝負しなきゃって気持ちをプレーで出せるようになったと思うし、変に気負うことなく、いつも通り自然な気持ちでプレーできた感覚は持ち続けたいです。そういう意味で、自分の殻を少し破れたかな、と。

(※1)24期上野裕人。2011年度副将を務めた。
(※2)23期宮澤修一。2010年度幹部、2011年度ヘッドコーチを務めた。



4年生であること
 それからは、プレーの中で「4年の俺がやらなくちゃ」という気持ちを掻き立てられることはすごく多くなりました。だけど、練習中は自分のことで精一杯になってしまうことも多いです。練習の雰囲気がだらけないように、まずは自分が頑張ろうとは思っています。例えばメニューの始めは一番遠いポイントまで走ったり、メニュー間は疲れていても絶対ジョグ移動したり。あとは、細かくて地味なところですけど、片付けを絶対さぼらないこと。でもそれだけじゃだめで、4年だからもっと声出さなくちゃって思うんですけど、そこはまだまだです。
 俺は、Aチームにいるけど技術的にもまだまだなところがあるし、なかなか自分を棚に上げきれない。自分ができてないのに人に言うのはやっぱり抵抗があって、だから他人への指摘も、「お前そのパスミスで負けるぞ」なんて強くは言えなくて、「もっとこうした方がうまくいくよ」っていうような感じになってしまいますね。試合はミスしたら負けるっていう状況で、練習もそういう厳しい状況に近づけてやらなきゃいけないと思うから、プレッシャーをかける方が本当はいいと思うんです。だけど、2年生の時とかは正直恐いと思うし、それでプレーが萎縮することもあると思います。そこで西山(※3)みたいに頑張って結果を出せるのが一番いいとは思うんですけど、当時の俺はうまく自分を出せずに、勝負の場に居続けられなかった人間なので、今はどちらかというとフォロー側に回ることが多いです。自分が2年の時は、峯さん(※4)が、練習中は厳しい声も出すけど、終わってから声をかけてフォローしてくれて、それでこう、ちょっとほっとしたことがあったので。だから、厳しいことを前に立って言う人と、後ろからフォローする人の2種類がいてもいいのかな、とは思います。

(※3)26期西山悠太朗。2013年度幹部。
(※4)24期峯村元章。



「いつも通り」
 俺は、練習試合とか普段の練習のスクリメとかも緊張してしまうんです。MFフライで入っていく時でさえ、緊張します。だから、緊張しないのは諦めて、緊張した状態でも頑張れるようにしたい。難しいんですけど、いつも通りいつも通りって言い聞かせています。俺は緊張した時とか慌てた時に地が出るというか、自分でこうしようと思ったようにプレーができるわけじゃないから、試合で多少慌てた時や、いきなり相手が来た時に冷静に、なるべくいつも通りのプレーができるように、最近は型というか、良い癖をつけるようにしています。
 2年の頃はとにかく量が大事だと思って、ひたすら自主練をやっていました。でも4年なってからは、だらだらやるというよりは、もちろん量も大事なんですけど、良い癖をつけることを意識しながらやっています。普段歩くときも、クロスを意識したりして。練習すればするほど自信つくってよく言われますけど、やってもやっても、「もっと練習してる人はいる」と思うと自分はまだまだだと思うし、調子の波も疲労もある。自分の中で色々なバランスを調整して、やろうと思っています。

 
 
 そうやって練習して「お、ちょっとうまくなったかな」って実感できる時は、嬉しいです。クロスにボールが入って投げる感覚は単純に好きだけど、でもやっぱり練習がきついなって思う時はあるわけです。きついけど、きついからこそ、そういうときにDFでしっかり守れたとか、シュートが入ったとか、そういった小さい成功が嬉しい。そのためにってわけじゃないですけど、うまく体使えたなとか、今うまくいったぞって感覚は間違いなく、やる気の源になっていると思います。
 たまにあるちょっとした喜びをエネルギーにしながら練習して、試合でシュートが決まった時の喜びはすごく大きいし、特に大事な場面で決められたらもっと嬉しい。俺はあまり感情が表情に出なくて、喜怒哀楽が見えないって言われることも多いんですけど、点決めた後、皆が寄ってきてくれるのも実はすごく嬉しくて、そのためにやってる、といってもいいです。それに、他の人が点を取るのも嬉しいです。上智戦はだぎちゃん(※5)が初得点して喜んでいたのも嬉しかったですし。点決めてみんなが寄ってきて一緒に喜んでくれる、なんて楽しさは今、ラクロスにしかないですから。

(※5)27期小田切拓也。






 (20130912 edited by Ami Usui)
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